地域を支えられる地銀へ 規制緩和で自治体や企業との協働を促す

コロナ危機でダメージを受けた地域経済。それを立て直す役を担う地銀も、経営基盤の強化が必要だ。2021年には、統合・再編を視野に入れたシステム統合の支援制度が実現しそうだ。地銀の業務範囲は厳しい規制の下にあったが、新しい役割のために必要な規制緩和が進んでいる。

新発田 龍史(金融庁監督局 銀行第二課長)

新しい年が始まる年末年始は、金融庁の事務年度(7月~翌年6月)では折り返し地点。金融庁監督局銀行第二課長の新発田龍史氏は、「2020年事務年度はこれまで、コロナ危機への対応が最重要課題でした。出血している患者に輸血をするような形で、危機に瀕した事業者の当面の資金繰りを支援してきました」とこれまでの半年間を振り返る。

コロナ危機下で緊急に資金が必要になった事業者・個人のため、金融庁はLINE公式アカウント「金融庁 コロナ サポート!」を立ち上げ、支援情報を発信した(出典:ソーシャルデータバンク)

感染者が日々発生する中で、コロナウイルスと共生する「新しい日常」が始まった。以前の水準まで売上を戻すことが期待できない業種・事業者もいる。日本の企業の約8割のメインバンクである地域金融機関(地銀)が果たすべき役割は大きい。新しい世の中でビジネスを継続するために、業態転換やビジネスモデル変革、あるいは新規事業立ち上げを目指す事業者に対する支援者とならねばならないからだ。

「地銀には、それぞれの地方の優れた人材が集まっています。資金やネットワークもあるので、危機の中それを地域のために使うことを期待されています」と新発田氏は指摘する。

企業を支援する地銀を強化

ただし、地銀が抱える問題は、コロナウイルスの流行前から顕在化していた。地方の人口減少で利用者は減り続け、ゼロ金利が続く中では融資から得られる金利も期待できない。この結果、コア業務からの純益が20億円に満たない銀行が約2割を占めるようになった。ウイルス感染の拡大は、この困難な状況にさらに追い打ちをかけるものだ。

菅義偉首相は、厳しい環境の下にある地銀の経営基盤強化の必要性を指摘しており、そのための手段の1つとしての再編や経営統合に言及している。「地銀が地域を支えられるように、体力と筋力をつけなければならない時期に来たと言えます」と新発田氏は話した。

地銀に係る新制度や規制緩和は、金融庁の金融審議会「銀行制度等ワーキング・グループ」で検討が進められている。このワーキング・グループは、コロナ後の地域経済の回復・再生に地銀が貢献できるよう、業務範囲規制などを見直そうと2020年9月に立ち上げられたものだ。

ワーキング・グループでは、地銀が合併・経営統合等の抜本的な事業見直しを行う際に、システム統合等の費用を支援する新しいしくみも議論された。「資金交付制度」というもので、期間を限定した支援措置だ。

「銀行のシステム統合は、初期投資が巨額になるため、この新しい制度で後押しが可能になります」と新発田氏はいう。

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