2020年9月号

後継者が挑む 新事業のつくり方

事業構想大で進める事業承継 仲間と議論し新規事業を考える

月刊事業構想 編集部

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事業構想大学院大学には、新しい事業をつくりたいと志す様々な院生が毎年、入学している。その中には、同族で会社を経営している、色々な状況から会社を引き継ぐことになった、という人も多い。事業を承継し、大学院で事業構想した修了生から、承継者の生の声を聞く。

――事業構想大学院大学には様々なバックグラウンドを持つ院生が構想を進めています。先代から事業を受け継いだり、その準備をしている承継者も毎年複数人が入学し、新しい事業の構想に取り組んでいます。修了生の皆さんは、どのような形で事業を承継したのか、ご紹介ください。

神谷 私は事業構想大学院大学の第1期修了生で、「ROOTOTE(ルートート)」というトートバッグ専門ブランドを展開しています。兄が創業したデザインオフィスを分社承継しました。

神谷 富士雄(かみや・ふじお)
ROOTOTE(ルートート)代表取締役
事業構想大学院大学 東京校1期生(2012年度入学)

藤森 私は、父が創業したジュエリー工房を承継し、現在総勢30人くらいの規模の会社を経営しています。国内で小売と卸を手掛けていましたが、国内市場はどんどん縮小しています。そこで、シンガポールに進出して7年目になるところです。5月にはコロナ危機で月の売上がゼロになるという、厳しい経験をしている真っ最中です。

藤森 隆(ふじもり・たかし)
フジモリ(Fujimori Inc.) 代表取締役
事業構想大学院大学 1期生(2012年度入学)

井上 私は、住宅関連の広告の企画・製作会社の代表を務めています。先代社長との血縁はなく、社内から選ばれて承継した形です。

井上 裕一郎(いのうえ・ゆういちろう)
インサイトディレクション代表取締役、IDコンサルティング 代表取締役、リビングウォンテッド運営
事業構想大学院大学 東京校5期生(2016年度入学)

平山 父親が創業した加湿器メーカーを承継しました。実質的に代表取締役になったのは2006年です。なお、先代は今年で91歳になりますが、毎日元気に出社しています。

平山 武久(ひらやま・たけひさ)
ピーエス/ピーエス工業 代表取締役
事業構想大学院大学 東京校6期生(2017年度入学)

――皆さんが事業構想大学院に入学した動機をお話しください。

神谷 ROOTOTEのブランディングは2001年から、それまで手掛けていたデザインの事業からの「選択と集中」で始めました。トートバッグは使い勝手や機能など独自性を加えればブランディングできるのではと考えました。

兄が立ち上げた会社が創業から30年を経過し、いずれ中継ぎとしても承継する可能性があること、ブランディング活動も10年目を迎え、新しい構想を立ち上げていこうと志すも、業界しかり、社内しかり、同じ枠組みでは新しいモノ・コト生まれにくい。閉塞感を持ち始めたとき、事業構想大学院大の開学の広告を見、説明会に参加して、これだと思い入学を決めました。

仲間を求めて事業構想大に入学

藤森 ジュエリーは保守的な業界で、経営者の高齢化が進んでいます。バブル期から比べると市場が3分の1に縮小していることもあり、どう逃げ切るかという感覚の経営者が多い。私は大卒後の3年間をIT業界で過ごし、同世代で切磋琢磨して仕事をしていました。このため工房を承継して、「誰もいない山の中に来てしまった」と感じました。大学院に入学した理由は、同じ目線で山登りできる仲間が欲しいと考えたためです。

井上 私は、プロパー社員として入社した会社で7年間働き、ディレクターを務めていた時に、事業を承継する話が来ました。社長に就任してから5年目くらいに、会社も安定してきたので、次のステップを考えなければと思って大学院に入学しました。

平山 創業者が力強く組織を引っ張る経営者だったので、細かいことにも拘り、決断してきました。その中で長年活動する中で、事業を承継しても今までの形の中に落ち着いている自分を感じました。どうしようかと考えていたら、元旦の広告が目に入り、事業構想大学院大学に入学したというわけです。

――事業承継の際、どのような困難がありましたか。

藤森 フランスで修業したジュエリー職人である父には「自分で作る」という強い思いがあります。私にはそれはないので、直接対峙すると負けてしまいます。職人の修行をしたわけでもないので、職人には足元を見られてしまうところもありました。少しずつ信頼関係を築いて解決してきました。

末っ子ということもあり寂しがり屋なので、会社というコミュニティーを心地よくしたいと考えています。承継のスタイルも、新会社を立ち上げ、父の会社から良いところを少しずつ移す形で引き継いでいきました。

神谷 自身としてはあまり事業を承継した感じはなく、シームレスな感じで次世代に渡せたらいいとイメージしています。承継直後は、兄と自分を比較するようなことを言われたりもしましたが、そういう人はまじめに取り合う必要はない。会社としては、自分でダメなら他の人、という選択肢もありますので、なすべきことをシンプルにやっていこうと考えています。

組織マネジメントに苦闘

井上 社長になることが決まったとき、私より年上の社員は退職されました。引き留めもうまくいかず、世代交代ができたといえばそうだけれど、社内の人心が荒れてしまいました。「会社の代表にならないか?」と打診されたとき、私は「では業界で認められよう」と頑張った。しかしその分、社内の組織マネジメントがお座なりになってしまった。社長になる前の1年は、非常に苦しい期間でした。

――事業承継のやりがいについてはいかがでしょうか。

平山 事業承継のやりがいは、父が始めたことにさらに新しい展開を加え、実現することにあります。創業者である父は半世紀、会社を引っ張ってきましたが、できなかったこともたくさんある。例えば、建築設備の世界の中での立ち位置は、エンドユーザーとの接点が少ない。もっとエンドユーザーとの対話を増やし、理想的な環境を共に作っていく。このような先代からの夢を実現したい。

藤森 ジュエリーの事業はパーソナルな作家性に基づくもの。次世代に何か引き継ぐものがあるかと言われると、明確なイメージがありません。承継しなくてもいいような形で、僕の仕事は終わらせたい。ただ、シンガポールで立ち上げた法人で働くスタッフがとても優秀で、将来が楽しみ。シンガポール法人を中心にビジネスを継続すれば面白いかもしれないと直感的に考えています。堅実に承継していくというよりは、やりたいようにやって、その中から、次またやりたいことがある人が出てくればよい、と思います。

 

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