フェイスシールドを2週間で投入 3Dプリンタ活用、新製造業を確立

長野県伊那市、眼前に中央アルプスを臨む美しくのどかな地に1970年からの歴史を持つスワニー。2010年、3代目として家業を継いだ橋爪良博氏が、製品設計開発へと事業を大きく転換した。自社を「カタチづくり屋」と定義し、3Dプリンタやデジタルモールドなどの独自技術を揃えている。

橋爪 良博(スワニー 代表取締役社長)

スワニーは、1970年、マイクロモーターやコンデンサーなど電子機器部品を製造する会社として創業した企業。メーカーからの発注を受けて部品を製造し、ピーク時には100人ほどの従業員がいたという。しかし、国内メーカーが海外へ生産をシフトするのに伴い、受注は減っていった。現社長の橋爪良博氏が3代目を継いだ2010年には、数千万円の借金が残されているような状態だったという。

「家業を継ぐにあたり、これまでと同じやり方では成長は見込めませんでしたので、思い切って発想を変え、製品設計開発業務へと事業を大きく転換しました」(橋爪氏)。

顧客との密なやり取りや、迅速なレスポンスが重要となる設計開発。首都圏に顧客が集中するなかで、都内から2時間半~3時間かかる伊那市での事業は、地理的条件としては不利となる。しかし、そうした制約が、新たなイノベーションを起こすきっかけとなった。「ここで事業を継続するには、スピードや新しいコンセプトに基づく工作法など、他にはない付加価値を生み出す必要がありました。コスト競争に陥れば、地理的に有利な会社が勝ちます。『コストを超える魅力づくり』が必要でした」(橋爪氏)。

そうして生み出された特許技術が、3Dプリント樹脂型を用いて量産材料で射出成形できる最新技術、デジタルモールド。プラスチックや金属の製品を量産する場合、金型を作りプレス加工するのが一般的だ。しかし、複雑な職人技が必要となる金型を製作するには、高い費用と1.5~2カ月の製作時間が必要となる。多くの販売が見込める場合はいいが、小ロット多品種製品への対応となると、開発コストが売上を上回り、金型を作れば作るほど赤字という結果になってしまう。

3Dプリンタで樹脂製の金型を作るデジタルモールドは、金属製の型に比べ費用は6分の1、時間は10分の1以下で部品製造まで実現できる。迅速で安価に量産材料で試作でき、少量生産にも柔軟に対応可能だ。スワニーはこの技術で、大手玩具メーカーや電機メーカーからの受注を獲得してきた。2018年には、経済産業省のStartup Factory構築事業の支援拠点に選ばれ、スタートアップ企業の製品の量産化試作や設計をサポートする役割も担うようになった。

スワニーのデジタルモールド。3DCADで製作したデータをもとに、樹脂製の金型を作る

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