尾道で働く人が1年間履き込んだユーズドデニム 地域の個性を紡ぐ

風光明媚な瀬戸内のまち・尾道で「尾道デニムプロジェクト」や「BETTER BICYCLES」など、地元の魅力を活かした事業を展開するディスカバーリンクせとうち。人や文化、まちを結び付け、その未来をどう育てるかを共に考えている。

出原 昌直(ディスカバーリンクせとうち 代表取締役)

9年間商社で勤務した後、瀬戸内海沿いの工業都市・福山にUターンし、繊維業の会社を立ち上げた出原氏。ある日、地元の高校時代の先輩・友人らと会食した際、先輩が「これから10年、20年、30年先とこの町で、今までと同規模で船をつくっているイメージがどうしてもわかん。これから雇用をつくることができなかったら、この街並みをどうやって僕らの世代が守っていくことができるんか」と、危機感を吐き出した。

これが、同じ思いを共有していた仲間と立ち上がるきっかけになった。2012年6月に「ディスカバーリンクせとうち」を設立した当時を、出原氏は「危機感を共有する一方で、私たちの地元である瀬戸内、尾道や鞆の浦は豊かな自然や資源に恵まれています。そんな環境にある場所だからこそ、土地の可能性と向き合い、様々な手段を持ってすれば、新しい事業と雇用を生み出すことができるのではないかと会社を設立しました」と振り返る。

新しい事業で雇用を生み出す

「ディスカバーリンクせとうち」が最初に手掛けたのが、尾道市で路地や起伏のある土地が特徴的な千光寺周辺の「せとうち 湊のやど」。古民家を滞在施設として再生し、ここを起点に瀬戸内観光をしてもらうプランで、自分たちで発信したSNSや利用者の口コミがリピーターを呼び込んだ。

次に手掛けたのは「サイクリング×建築×観光」を基軸にした複合宿泊施設「ONOMICHI U2」。県営の海運倉庫をリノベーションした建物は、しまなみ海道の起点である尾道でも、尾道駅至近というアクセスのよい立地にある。この環境を生かして、自転車と一緒に宿泊できるホテルやレストラン、ショップなどを運営している。多くのスタッフが地元・尾道周辺で生まれ育った人なのも特徴だ。現在はホテルの稼働率も上がり、レストランは地元の人も含む多くの人に利用され、地域から愛される施設となった。

並行して2013年には、東京の自由大学と連携し、共同で「尾道自由大学」を設立。尾道ならではの講義を週末に開講したところ、九州や首都圏からも参加者が訪れた。尾道自由大学での講義が、地域おこしへの協力につながっていると、出原氏はその活動の意義を実感している。これらの事業を通じ、既に100人程度の雇用を地域の中に生み出した。

※現在は、せとうち 湊のやど、ONOMICHIU2は別会社が運営

尾道を舞台に、本物のモノづくり

ディスカバーリンクせとうちは、アパレル事業も柱の1つだ。福山市を中心とした広島県東部から岡山県西部にかけての備後地方は、デニムの産地として知られている。例えば、カイハラ(広島県福山市)が手がけるカイハラデニムは、その品質が評価され、国内外の一流ブランドが採用している。

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