川口市のOcalan パンの予約生産で食品ロスを減らす

多加水パンの完全予約生産で、地域の顧客の支持を集めるOcalan。まちのパン屋さんの実績とパン教室の経験から、おいしいパンをロスなく作る方法を開発した。SDGs目標で示されている飢餓の撲滅には、作る側と消費者の双方が責任を果たす必要がある。

坂巻 達也(ボングー代表取締役)

日本では食料が食べられることなく無駄に捨てられている。環境省の推計では、日本国内の食品廃棄物は約2759万トン、うち本来食べられるにも関わらず捨てられた「食品ロス」は約643万トンにのぼる。食品ロスは、経済的な損失の源となるのはもちろん、環境にも負荷をかける。食べ物を無駄に捨てない取組は、21世紀の持続可能な社会を築くうえで不可欠だ。

埼玉県川口市の焼き菓子・パン工房Ocalanでは、製造と流通の段階で食品の無駄を出さない仕組みを開発した。Ocalanを経営するボングー社長の坂巻達也氏は、パンの完全予約販売を通じて、ロスを出さないベーカリーのビジネスモデルを体現している。

川口発の食品ロス削減の取組

日本のベーカリーでは様々な種類のパンが販売されている。店に並ぶたくさんのパンから、顧客が好きなものをトングでトレーに取り、レジに持っていく「セルフ式」の店舗が国内に広まったのは、およそ50年ほど前だ。物が無かった時代の記憶が残る中、目の前に並ぶ多様なパンで、消費者は豊かな気持ちを味わえた。このビジネスモデルは支持を集め、今でも「まちのパン屋さん」の主流と言える。

しかしこの売り方は、大量の食品ロスの発生にもつながる。閉店間際までパンを焼き、品切れなく商品を選べるようにすれば売れ残りは増える。また、たくさんのパンを用意しても、店を訪れる顧客数は天候などにより左右される。陳列台でさらされたパンは劣化も早く、閉店まで売れなければ多くが廃棄される。坂巻氏は、「残ったパンを捨てることに罪悪感はあるものの、次第に慣れてしまっていました」と振り返る。

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