ミレニアル世代の台頭とDXの衝撃 今、求められる経営戦略

一世を風靡したファストファッションブランドが凋落する一方で、サステイナブルかつ手ごろな価格を打ち出したECブランドが若者の人気を集める。デジタルをベースに、SDGsに配慮したビジネスを進めることが、企業の発展には不可欠だ。

10月末で日本を撤退するフォーエバー21

ファッション産業でのDX破壊

ファストファッション大手のフォーエバー21(FOREVER 21)が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を検討中との最近の報道を聞いて、改めてデジタル破壊のインパクトの大きさを実感した読者は多いことだろう。米国ではアマゾンがファッションの世界でも圧倒的な競争優位を誇っているのである。フォーエバー21は日本でも、2019年10月末で国内全14店舗と自社ECを閉鎖し、完全撤退する。

フォーエバー21は1984年、韓国出身のドン・チャン氏とジンスク・チャン夫人が米ロサンゼルスで創業した(以下、フォーエバー21に関しては、https://www.wwdjapan.com/articles/945638)。トレンドをいち早く見つけて取引先に指示し、企画・デザインと生産を任せ、仕上がってきたものを買い取り、必要であれば修正を加えて、スピーディー、かつ手頃な価格で店頭販売し、ファストファッションのビジネスモデルで成長を遂げた。成長後は、取り扱いのほとんどをオリジナルデザインに切り替えた。ファストファッションは、安い価格でトレンディな洋服を若者に提供することで大人気となった。流行が変わっても価格が安いため、経済的にあまり負担なく新しいものが買え、それが若者の支持を集めた。

フォーエバー21は1989年にはショッピングモールへの出店を開始、95年にはカリフォルニアから全米へと店舗網を拡大。店舗数の増加に伴うスケールメリットの創出などにより、売上高も拡大していった。2003年度に181店舗・売上高3億1500万ドルだった業績は、2009年度には280店舗・23億ドルにまで急拡大した。日本に1号店をオープンしたのはまさに急成長中の2009年4月29日のことだった。一足早い2008年9月に日本に上陸してファストファッションブームを巻き起こしたH&Mの原宿店の隣に、530坪(1749平方メートル)の店舗をフォーエバー21は出店した。

開店当日にはなんと1200人が行列し、1日平均で約1万6000人を集客してマスコミで大きな話題となった。開店2カ月で来店客数が100万人を突破、半年で300万人を達成し、社内記録を更新するなど、ファストファッションブームに拍車をかけた。フォーエバー21の黄色のショッピングバッグは若者の間で大きな人気を集めていた。

しかし、フォーエバー21社の売上高は、2015年の売上高44億ドル(約4708億円)をピークとして下降を開始し、直近では34億ドル(約3638億円)まで低下してしまった。負債は5億ドル(約535億円)といわれている。フォーエバー21の息の根を止めることになった1つの要因が、ターゲット顧客だったミレニアル世代=デジタルネイティブ世代の間で急速に高まっているサステイナビリティへの意識だった。ミレニアル世代は、使い捨てを良しとしなくなっている。長く着られるアイテムや、メルカリや古着店などでの2次流通で高値で取引される、品質力や換金性の高い商品をミレニアル世代は求めるようになっている。

ミレニアル世代の支持を集める
「徹底的な透明性」

フォーエバー21とは対照的に、ミレニアル世代の支持を集めているのがエバーレーン(Everlane)だ(以下、エバーレーンに関しては、 https://forbesjapan.com/articles/detail/25284/3/1/1
https://www.businessinsider.jp/post-161400)。2010年創業の同社は、ウェブサイトを通じて消費者に直販する「D2C(Direct to Consumer)」型のビジネスモデルを特徴とし、既に日本を含めて38カ国で事業を展開している。ただし近年のeコマース企業と同様、ニューヨークなどでリアル店舗も運営している。

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