2019年9月号
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地域特集 兵庫県

城崎温泉はまち全体が1つの旅館 根強いインバウンド人気

西村 総一郎(西村屋 代表取締役社長)

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駅は玄関、道は廊下、旅館は客室、土産屋は売店、外湯は大浴場――。そうした言葉に示されるように、まち全体が「1つの旅館」として発展を遂げてきた城崎温泉。城崎を代表する名旅館を率いる西村総一郎社長は、伝統を受け継ぎながら宿泊業の未来を見つめる。

創業160年の歴史と伝統を今に伝える山陰随一の純日本旅館「西村屋本館」

西村 総一郎(西村屋 代表取締役社長)

バブル期には年間約90万人に達していた城崎温泉の宿泊者数は、「失われた10年」以降、長らく低迷を続け、2010年には49万人にまで落ち込んだ。しかしそれを底に、地域ぐるみの努力で2011年度から回復へと転じ、2015年には67万人にまで巻き返した。5年間でおよそ35%増の堅調な回復ぶりだ。志賀直哉らの文人にも愛されたその地で160年の歴史を歩んできた旅館「西村屋」の当主が西村総一郎氏だ。

宿泊業の人材育成・確保に尽力

近年は海外からの訪問客にも高い評価を受ける城崎温泉だが、宿泊客全体に占める外国人客の比率は10%前後にとどまり、伸びしろは大きい。西村社長もインバウンド対応には力を入れている。

「おもてなしの面では、客室係を中心として外国語教育に取り組んでいます。おもてなしに特化した実践的な教材を使い、隙間の時間にスマホで学べるように工夫しています。旅館の顔はやはり客室係であり、係がお食事の献立や調理法を説明できるだけでも、お客様の評価は大きく高まります」

また、西村屋は、食事を各客室で提供する方針を堅持している。それは、西村社長のこだわりだ。

「お食事処に集まっていただくほうがコストは抑えられるのですが、客室係が給仕などで直接にお世話をする形のほうが、より大きな満足につながります。特に海外のお客様にとって、客室係のおもてなしで日本の食を味わう体験は忘れがたいものになるようです。経費抑制を第一に考え始めると価格競争に陥る懸念もあり、経営戦略を考える際には『心からくつろいでいただける場をつくる』という原点に立ち返るようにしています。今年4月、本館隣にオープンした『さんぽう西村屋』は、レストラン、ギフトストア、サロンを兼ねた店舗で、その思いを細部にまで込めました」

2019年4月にオープンした「さんぽう西村屋 本店」。囲炉裏が中心に置かれたダイニングで、炭火で調理された但馬の豊かな食材を提供する

しかし、人口減少が続く現在、宿泊業の人材不足も深刻化し、客室係の高齢化が進んでいる。西村社長は人材の育成・確保にも力を注いでいる。

「城崎は2018年の人口が約3500人という過疎地であり、さらに労働人口に占める50代以上の割合が5割を超えています。当社の基盤であるこの地の存続には、若年世代の定着が不可欠です。宿泊業が働き手を確保するには、職場環境を改善していくしかありません。まずは当社の若い社員が根を下ろしてくれるように、寮や社宅を完備しています」

また、海外人材の採用にも積極的に取り組む。現在は米中仏から各1名、ベトナムから14名を採用している。海外人材の採用は、地域の将来に向けた居住人口の維持も視野にあるという。

森林に囲まれた5万坪の大庭園が美しいホテル「西村屋ホテル招月庭」

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