セイコーエプソン 新事業を支える「省・小・精の技術」と発想力
世界で初めてクオーツウォッチを開発し、現在はプリンティングをはじめ4つの領域で事業を展開して「社会に不可欠な企業」を体現し続ける、セイコーエプソン。SDGsにつながる新商材や働きやすい環境への変革が生む、新たな価値とは何か。
ものづくりのDNA、
「省・小・精の技術」
世界初のクオーツウォッチを生んだ日本を代表する精密機械メーカー、セイコーエプソン株式会社(以下、エプソン)。1964年に開催された、アジア初の東京オリンピックでは公式計時を担当したセイコーを支援し、独自に開発したスポーツ競技用の電子記録システム「プリンティングタイマー」などで、数々の輝かしい記録を刻んだ。
その技術は画期的な小型軽量のデジタルプリンタ「EP-101」を生み、その子ども(=SON)を世に送り出したいとの思いから、ブランド名を「EPSON」とした。ものづくり企業としてのDNAは、今も脈々と受け継がれている。
エプソンのDNAとは、「省(しょう)・小(しょう)・精(せい)の技術」である。無駄や手間、時間、コストを徹底的に省き、社会の持続的な発展のために環境負荷を低減し、生産性と正確さ、創造性を磨き上げることから価値を生み出す。それを尊ぶ文化が、社内にもしっかりと根付いている。
代表取締役社長の碓井稔氏は、「省・小・精の技術はエプソン最大の強みであり、これを基盤として『世の中になくてはならない会社』を目指しています。具体的には、プリンティング、ビジュアル、ウェアラブル、ロボティクスの4つの領域でイノベーションを起こし、どこの会社もやったことがないような新しい価値を創り出していこうとしています。
エプソンが起こす4つのイノベーションと事業領域
10年後の姿をイメージして2016年3月に制定した長期ビジョン『Epson25』でも、『"省・小・精の価値"で、人やモノと情報がつながる新しい時代を創造する』と謳っています」と話す。そして、「情報社会はさらに深化し、サイバー空間でのビジネスが展開される今、その知見や技術的なノウハウを融合することで新しい世界を創り出していけます」と力を込める。
産業を変える
インクジェットイノベーション
先に述べた4つの領域の中で、最も取り組みが多岐にわたるのがプリンティング領域である。「印刷や出版など、プリンティング事業は非常に幅が広く、規模が大きいのですが、新しい時代を見据えた時に、このままではいけないと認識しています。ただ紙に情報を印刷するということではなく、世の中の大きな産業インフラとして発展させます」と碓井氏は言う。パンフレットや本などの印刷物はもちろん、壁紙、服地もプリント。エプソンでは、過去に液晶パネルのカラーフィルターをもインクジェットの技術で製造し、エレクトロニクス産業を新たな展開に導く技術としてさらなる開発を進めている。
「これも当社のインクジェットプリンターで印刷したものです」と碓井氏が指差したのは、自身のネクタイ。「従来の捺染(なっせん)という方法だと、多いものでは20版から30版重ねて印刷し、色の数だけインクが必要になり、水も大量に使います。インクジェットなら4色でプリントでき、水も少なくて済みます。また、捺染の機械はとても大きく、版の置き場と合わせると非常に大きな建物が必要ですが、インクジェットはその10分の1のスペースでできます。環境に良い産業構造になります」と話す。
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