世界中から仕事を選べる社会へ 国境を越えて人と企業をマッチング
国連の報告書によると、世界の移民・難民は2億4000万人(2015年時点)にのぼり、2000年に比べ41%増加している。ボーダーレス化が進み、異国から就職する人も増える中で、国境を越えた人材サービスで成長しているのが、フォースバレー・コンシェルジュだ。
国籍を問わずに優秀な人材を採用したい企業に対して、プロモーション、候補者獲得、事前選考から就労ビザの取得まで、採用に必要な支援をワンストップで提供しているのがフォースバレー・コンシェルジュだ。同社のサービスには、約160ヵ国・20万人強の外国人材が登録しており、その中にはMITやインド工科大学、シンガポール国立大学といった各国のトップ大学の学生も含まれる。
フォースバレーのターゲットは各国のトップ学生であり、技能実習生は対象にしていない。柴崎洋平社長は、「日本に行きたいと考える大卒の高度人材はたくさんいます。私たちの事業は、それを実証してきました」と語る。
2019年4月に改正出入国管理法が施行され、新たな在留資格「特定技能」が設けられた。「特定技能」が対象とするのは、主に単純労働に従事する外国人だ。こうした政策の方向性について、柴崎社長は警鐘を鳴らす。
「特定技能の人材層は学歴要件が無いため、このままでは技能実習と同じく18歳以上の中卒・高卒の外国人を多く迎え入れることになります。単純労働者の増加は、受入地域でのトラブルや犯罪の増加など、欧米と同様の移民問題を招きかねません。問題の増加を防ぎ、深刻な人材不足を解決するためには、特定技能の受入れ要件を大卒以上に限定すべきです。日本は今、岐路に立っていると言えます」
海外ネットワークを独自に開拓
柴崎社長は1998年に上智大学を卒業してソニーに入社し、携帯電話向けカメラの商品企画や半導体の営業などに従事していた。
「ソニー時代、数多くのグローバル企業とビジネスを行い、優秀な人材は世界中にいることを実感しました。でも、日本企業にいるのは日本人ばかりで、海外からはほとんど採用していない。調べてみると、世界的に見ても国境を越えた人材サービスは誰もやっておらず、チャンスだと考えました」
柴崎社長が思い描いたのは、海外から日本に人材を呼び込むだけでなく、世界から世界へとクロスボーダーで就職・採用を支援すること。2007年にフォースバレーを設立した柴崎社長は、まずは着実な第一歩を踏み出すため、国内にいる外国人留学生が日本で就職するための支援に乗り出した。
母校である上智大学を訪ね、留学生たちと知り合ってネットワークを構築。そして企業に営業をかけていった。古巣のソニーに相談したところ、応援したいと取引を快諾してくれた。さらに、上智大学でアメフト部に所属していた柴崎社長は、そのOBのつてを活用して顧客企業を開拓していった。
足元を固めた柴崎社長は、海外から人材を呼び込む事業を本格化。単身で各国のトップ校に乗り込み、「日本で働くというキャリアの選択肢を提供したい」と説明した。足を使って地道に協力先を広げ、現在、世界約700大学にアプローチすることが可能だ。
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