大企業のベンチャー連携、成果をあげるために必要なこと

今、日本のオープンイノベーションの現場では何が起きているのか。そして、大企業がスタートアップとの連携で成果をあげるには、何が重要になるのか。自身も「外部人材」として、多くの企業の経営に参画している琴坂将広准教授に話を聞いた。

琴坂 将広(慶応義塾大学 総合政策学部准教授)

日本企業が抱える
オープンイノベーションの課題

大企業がオープンイノベーションを機能させるには、全社的な理解と支援が必要です。例えば法務部が、成長可能性はあるが事業リスクもある取引を許容できるのか、それともリスクを徹底して排除するのか、それだけで成功の確率は大きく変わります。また、社内の知見や資産を外部に提供するとしても、どの程度踏み込んで外部に提供するのかを整理できなければ、現場が判断できず、実態のある連携は進みません。

大企業が全社一丸で動くのが難しい背景には、そもそもオープンイノベーションの利点よりも欠点に着目する経営幹部が少なくないことや、失敗を許容しづらい企業文化や組織制度が未だ存在すること、また、大企業からすると事業規模が小さいことがあります。仮に、スタートアップとの連携で100億円の事業を生み出せるとしても、売上高が兆円規模の企業の経営幹部にとっては、そのために自身の時間やリソースを割くのは効率が悪いという経営判断があり得ます。

また、スタートアップがもたらすアイデアのほとんどは「粗い」。大企業で長年、同様の事業に取り組んできた担当者にとっては、過去に思い付いているアイデアだったりします。社内の人間からすると、一定の収益性や事業性をクリアする事業開発に苦労しているのであって、「そのレベルで良いなら、いくらでも出せる」と思えるようなアイデアが提案されたりします。

一般の組織で、若手が勢い込んで提案した「斬新なアイデア」が、先輩にとっては経験と蓄積で「既にわかっていること」である場合もあるように、それと似たようなことがオープンイノベーションの現場でも起きています。

スタートアップとの連携を
進めるために重要なこと

大企業がオープンイノベーションで成果をあげるための近道は、まずはスコーピング。つまり、具体的に何を達成するのかという目標を明確化し、全員がそれに合意しなければなりません。

そして、ターゲットとする事業や機能は、自社があまり手掛けてこなかった領域や不得意な領域のほうが可能性は高まります。既存部門と重複するような事業で連携しても、その部署からの反発があり、「社内にもっと良いものがある」という話になりがちです。

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