エイベックスのオープンイノベーション 発足1年で新事業続々

生活環境の変化などで、最盛期の半分に落ち込んだ国内の音楽パッケージ市場。一方で、ネット配信やライヴ、VRなど、新しい音楽の楽しみ方が次々と生まれている。エイベックスは、新規事業をスピーディーに立ち上げ、次世代のエンタメビジネスにつなげようとしている。

加藤 信介 エイベックス グループ執行役員 CEO直轄本部 本部長

エイベックスは、ヒットコンテンツやアーティストの育成により成長してきた企業だ。若年人口が減少し、国内の音楽パッケージ市場が縮小する中で、音楽の売り方も、CDからダウンロード、サブスクリプション型へと変化。また、動画やライヴ、フェス、VRまで、音楽の楽しみ方は多様化している。このような変化に対応し、未来の事業につなげるため、創業30年を迎えた2018年4月、同社はCEO直轄本部を開設した。本部長として新規事業を担当する、グループ執行役員の加藤信介氏が同本部について話した。

発足1年で複数の事業を立ち上げ

CEO直轄本部は、グループ戦略を推進する横串業務に加えて、新規事業創出を担当する部署として発足した。エイベックスが過去に実施してきた新規事業、例えば携帯電話キャリアと共同で開始した動画配信事業や、音楽配信サービスなどは、主にトップダウンで始まったものだ。同社のビジネスモデル上、次に大きく開花するアーティストを発掘し、育てていく方がより重視されていたことも、背景にある。

この部署の設立の背景には、2017年にエイベックスで実施された構造改革がある。外部環境の変化を受け止め、新しい事業のタネを大きく成長させることが、CEO直轄本部の目標だ。
「構造改革の際、消費者の趣味嗜好の多様化、外部環境の変化に追いつくため、今までのやり方を変えようということになりました。組織も方法もアップデートして、トップのリーダーシップだけに依存しない、社員のエンパワメントと外部との共創による、ボトムアップのイノベーションを目指しています」と加藤氏は言う。エイベックスの行動規範は「叶えたい」を実現すること。これに基づき、社員がイノベーションを起こす際の受け皿となることも、組織の目的の1つだ。

さらに、新規事業創出に必要な資金や人的資源をグループ内で1本化するため、CEO直轄本部を開設する際には、エイベックス・ベンチャーズを合流させた。同社は2016年12月に設立されたエイベックスのコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)で、スタートアップへの投資実績を積み上げていた。

本部の発足から1年弱で、複数のスタートアップへの出資や合弁企業、子会社の設立を手掛けることができた(表参照)のは、CEO直轄であることに加え、投資チームが同じ部署内にいることが大きいと加藤氏は考えている。事業計画立案や、合弁企業立ち上げ、企業買収では、投資チームによる専門的なアドバイスが不可欠だ。「CEO直轄本部では、新規事業を本務としている人員約10人と投資チームの数人が、絶妙な補完関係で機能しています」と加藤氏は明かす。

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