2019年5月号
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新規事業の「壁」を越える

キリン 25年ぶりに復活した新規事業部署 埋もれた健康素材を再発見

佐野 環(キリン事業創造部部長 兼キリンホールディングスグループ経営戦略担当)

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25年ぶりにキリンに復活した、マーケティング、営業、研究者の混成チームからなる新規事業担当部署。「新規」事業として選ばれたのは、既に発売済みの健康素材の再スタートだった。イノベーションに意欲的な企業風土や、将来を支える人材育成にもつながっている。

佐野環 キリン 事業創造部 部長 兼 キリンホールディングス グループ経営戦略担当

キリンホールディングスは、ビール、ワイン、ソフトドリンクから医薬品まで、傘下に様々な企業を擁している。グループ内で国内の飲料事業をまとめるキリンには、2016年4月、グループを横断する新規事業部門である「事業創造部」が置かれた。発足から部長を務める佐野環氏が、同部における新規事業開発を振り返った。

新規事業部署の設置は25年ぶり

事業創造部は、久しぶりに設置される新規事業担当部署だった。現社長の磯崎功典氏も所属していた「事業開発部」は、80年代に第二次多角化を模索したのち90年代に廃止されている。21世紀に入ってからのキリンは、国内外の企業のM&Aを中心に、酒類・飲料事業に注力してきた。

新規事業開発を担う部門としては25年ぶりの設置となった「事業創造部」だが、「新規事業を創造する部署ができたということで、新しい事業が数多く、次々と創出されるのでは、という期待を寄せられました」と佐野氏は話す。事業創造部の前身は、健康に関する新規事業を作り出す「イニシアチブ」という位置づけで、事業プランを検討していた。このため、人々の健康に貢献する事業を手掛けることは決まっていたが、その他は既存の枠に縛られず、自由に考えることが求められた。

佐野氏は、2001年に発売されたキリンのチューハイブランド「氷結」の立ち上げと育成にかかわった経験から、アイデアが実際の事業につながるまでの難しさを知っている。事業創造部の発足から半年間は、キリンが全く手をつけていない領域の新規サービスや飛び地の事業アイデアがあったが、「キリンの強みを生かして実行できるのか」や、「自社にとって新しいだけで他により優れたプレイヤーがいないか」と、冷静に考え直した。アイデアが良くても実行できなければ事業にはなり得ない、と実行自体が困難なプロジェクトはペンディングとなった。

その中で着目したのが、キリンが長年に渡り免疫研究を積み重ね開発したプラズマ乳酸菌だった。プラズマ乳酸菌は、2012年にすでに商品化されていたが、当時はさほど注目を集めることはなかった。グループ各社がそれぞれ、飲料やタブレットを製品化していたのだが、今1つその良さが届いていなかったのだ。

「免疫研究で培った、圧倒的にすばらしい技術があるのに、うまく事業化の回路がつながっていなかったことに気づきました。新規事業という名前にこだわるあまり、“新しさ”だけにに執着していたことに気づき、それを一度捨てました」(佐野氏)

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