子育て世代の移住促進 長崎県大村市のプロモーション施策

美しい大村湾と、多良岳水源の森とに囲まれた大村市。長崎空港も立地し、まちの便利さと豊かな自然のバランスが取れた環境が自慢だ。若い世代の移住を促すプロモーションを、現地を訪問して考えた。

大村市は長崎県の中央に位置する市で、長崎空港を擁する県の玄関口だ

長崎県の中心部、大村湾に面した大村市は、現在9万6000人が暮らしている。これを2025年までに10万人にすることが、同市の目標だ。美しい山と海に囲まれた自然豊かな土地というだけでなく、市内には長崎空港があり、2022年度には九州新幹線長崎ルートの開通が予定されるなど、交通アクセスの良さを誇る。大村市は、小規模で単発に終わってしまう取組に課題を感じ、人口100万人を持つ大村湾を一つの経済共同体として連携を目指す「大村湾地域経済圏構想」を提唱する。

その一つとして、豊かな自然と、都市機能のバランスがよい「おおむら暮らし」プロモーションし、移住につなげる構想を掲げている。

3企業、3自治体から参加者が集まった事業構想大学院大学シティプロモーション研究会は、2018年7月に同市を訪問し、実際に現地を回りながら、同市のプロモーション施策について議論した。大村市は2017年7月に策定した移住ターゲット施策方針の中で、福岡圏域および首都圏の20代~30代の子育て世代を、移住のターゲットとして定めている。これらのターゲット層に訴求するプロモーション施策はどのようなものだろうか。

規模によらず起業を支援

移住でポイントとなるのは、生活手段の確保だが、地方では仕事の選択肢は都会よりも狭い。そこで切り札となるのが起業だ。移住者が自営業で収入を確保できれば、移住先の自治体は新住民と新しいビジネスを獲得できることになる。起業のしやすさは、移住者を集める上では重要なファクターと言える。

今回のシティプロモーション研究会では、まず、大村市で創業を目指す人のための講座「大村市創業塾」で講師を務める前田愼一郎氏が、その活動を説明した。大村市創業塾は2015年に始まった取り組みで、これまで11期230人の受講者を出してきた。「創業」を掲げてはいるが、非営利組織や福祉関連の事業、農業を行っている人や、既に事業を走らせている社長、事業承継者も参加している。1期3カ月で20~25人が受講し、これまでに49人が創業している他、マルシェなどイベント時のみに出店するプチ創業をした人も20~30人いるという。

大村市創業塾で講師を務める前田愼一郎氏と、一瀬珈琲のオーナーの一瀬靖太氏

「受講生の多くは農家の人や高齢の女性であるため、マーケティングや財務については『ステップアップ講座』を別に設けてそこで教えます。最初は難しいことは言わず、ビジネスをパターンとして示して、創業のハードルを下げようとしています」と前田氏は話した。様々なニーズに対応するため、受講生の顔ぶれを見てカリキュラムやテキストを柔軟に変更しているという。「一般的な創業講座というと、店舗を作ったり、会社を登記して......という話になりますが、大村市の創業塾では参加者を型にはめていません」と前田氏は説明した。

また、創業塾では、ビジネスの立ち上げだけでなく、継続支援も重要と考えている。そこで、地元の企業から「応援団企業」を募り、起業した人との橋渡しも行う。例えば、内装デザイン・施工の技術で起業した人を、人手不足に悩む建築会社に紹介する、などだ。なお、受講生、応援団企業ともに、市内外問わず募集している。

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