「関係人口」は新しい概念か? 過去の施策を再発見することも必要

移住した「定住人口」や観光による「交流人口」ではなく、「関係人口」への注目が増している。しかし、過去の国の動向を見ると、新しい概念を提起して予算を獲得してきた歴史があり、言葉の表面に惑わされることなく、従来の取り組みを再発見していく姿勢も求められる。

議会質問における
「関係人口」の経緯

昨年から注目を集める概念に「関係人口」がある。例えば、富田能成・横瀬町長は、2018年度の施政方針の中で「現時点では、まず一歩一歩、『ヒト・モノ・カネ・情報』の流入を促すことによる、交流人口、関係人口の増加と町の活性化の取り組みを継続していきたいと思います」と述べている。そのほか関係人口に着目する首長は多い。

関係人口の定義を確認する。総務省の「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会」によると、関係人口とは「移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者」と定義している。そして関係人口に注目する理由として「地方圏は、人口減少・高齢化により地域づくりの担い手不足という課題に直面しているところ、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、『関係人口』と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待できる」と指摘している。

議会において「関係人口」が取り上げられた動向を確認する。図表1は都道府県議会における関係人口に関する質問などの推移である。読者は「関係人口は新しい概念なのに、1990年代から使用されている」と思うかもしれない。

図表1 「関係人口」の議会質問の推移

出典:全国47都道府県議会議事録横断検索

 

しかし、図表1は今回定義している関係人口の意味で使われているわけではない。例えば「同和関係人口とは、同和の地区住民のうち...」や「全体として農業関係人口が大きく減少しないように...」あるいは「今年度、部が新設された今こそ、観光にスポーツや文化の関係産業や関係人口を...」という文脈で関係人口が登場している。

図表2 都道府県における「関係人口」の質問回数

出典:全国47都道府県議会議事録横断検索

 

今回の定義で使用されているのは、2017年からと考えられる。そのような背景を抑えつつ、参考として図表2の各都道府県議会における「関係人口」の質問回数も確認してほしい。2017年は青森県、島根県、山口県等の議会において、今回使用している関係人口が取り上げられている。サンプルが少ないが、地方圏で注目されている概念と言えそうだ。

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