観光だけではないDMOの役割 ものべみらいが六次化に挑む理由

REVICと四国銀行などが出資するファンドにより設立されたものべみらいは、人とカネの両面の支援を通し、地域の産業構造に沿ったDMOモデルケースの構築を進めている。

古川陽一郎 地域経済活性化支援機構シニアマネージャー 兼ものべみらい社長

「観光による地域経済の活性化のためには、地域が一つの経営体となることが必要だ」第2回DMO全国フォーラム1月29日のセッションで、地域経済活性化支援機構(REVIC)地域活性化支援部シニアマネージャーの古川陽一郎氏は聴衆に語りかけた。同氏は、ものべみらい(高知県南国市)の社長を兼任し、高知県物部川地域の観光まちづくりを進めている。

REVICでは、地域金融機関と共同で地域別・テーマ別にファンドを設立し、ファンドを通じて専門人材と資金を提供している。2018年初の時点で、34のファンドが運営中だ。ものべみらいは、REVICが四国銀行などと共に運営する、高知県観光活性化ファンドの投資先となる。

高知県活性化の戦略を実証

REVICでは、高知県の産業構造を分析した結果、その屋台骨である1次産業を巻き込むことが重要であると結論付けた。そして、「観光と6次化が統合された高知県ならではのDMOビジネスモデルを構築する」と古川氏は語った。物部川の流域地域は、県内でも特に一次産業の占める割合が高く、高知県の経済活性化モデルのパイロット地域にふさわしい場所だ。

このような戦略に基づき、地域の様々な事業者と協力してプランの実行を担うのが、古川氏が社長を務めるものべみらいだ。同社は2016年に、事業持株会社DMOとして全国で初めて設立された。県のバックアップの下、南国市、香南市、香美市の3市にまたがる広域DMOとして活動中だ。旧・第3セクターに対する投融資により香北ふるさとみらいを、公益法人に対する経営支援を担う龍河洞みらいを新たに設立し、連結職員数約35人で運営している。

同社が、物部川地域の観光関連、6次化関連産業の従事者規模をさらに詳しく分析すると、地域の産業従事者数の3分の1に当たる1万7533人をカバーすることが明らかになった。また、同地域の観光収益項目を分析し、経済インパクトの大きいものとして「入場料」「物販」「飲食」を特定した。

この他、地域を訪れる観光客を調査した結果などをまとめ、ものべみらいは、未就学児・小学生を帯同した家族連れを観光のターゲット層に据えた。そして、家族連れ向け地域回遊プランを作成。10年後には観光・6次化の消費額を18.9億円増、GRPインパクトで15.1億円増という経済波及効果を目指している。

2016年、物部川の流域3市では、地元の事業者や観光協会、四国銀行などとREVICにより物部川DMO協議会が発足した。この協議会の中で、ものべみらいは、観光事業者にマーケティング・地域経営戦略の立案役として組み込まれている。地域のDMOの全体組織の構想は、現在協議中だが、「観光」「6次化」に関する収益部門と協議会の事務局運営をものべみらいが担当し、公益部門は現在の物部川DMO協議会における合議によって推進される分担を検討している。

ものべみらいでは、観光事業者へのハンズオン投資、事業者・行政の委託で実施するコンサルティング、一次産品・加工品の販売を行う6次化事業で、収益を出しながら、地域の経済活性化を進めていく計画だ。

今後、REVICでは3月末にDMOマニュアルを作成予定であり、自治体・地域金融機関等から問合せがあれば対応していく。

 

お問い合わせ


TEL:03-6266-0310(代表)
URL:http://www.revic.co.jp/

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。