2017年8月号

新規事業 成功のポイント

「本気にさせる場」をいかに用意するか 新規事業人材の育成手法

月刊事業構想 編集部

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変化の激しい時代にこそ、新規事業を開発し、成功へと導く人材が求められている。本稿では、新規事業を開発する人材の育成をどのようにしていけばいいのか、事業構想大学院大学の取り組みをベースとして、いくつかの観点を提供したい。

院生やプロジェクト研究員は、自らアイデアを出し、事業構想を研究し、実現可能な計画へと落とし込んでいく。写真は、ゼミでディスカッションする様子

最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。―― ダーウィン

生物学の世界では、常識である進化論。企業も同様に当てはまる。時代に合わせて、変化するには、自社の経営資源を新結合させ、未来社会において存在価値をもつ事業を生み出すことが必要だ。

そもそも新規事業の目的は、社会変化とともに既存の事業の先細りを懸念し、新しい事業の柱をつくることにある。もっと言えば、激しく変動する社会の流れを先読みし、未来社会の中から事業の種を探し、事業を創り出し、推進していくことが必要である。そのためには、単に従来の会社の枠にはまった会社人では難しい。

多くの企業が陥っている現実

新たな事業を開発できる人材を育成しようとしたとき、「スキル教育」や「マインド教育」で、育てることができるだろうか。

よくあるケースは、教育研修の場で、正解や模範解答探しになっていることだ。優秀と言われる人であるほど、講師の意図を察知し、求められているであろう正解を回答する。これは、講演形式の研修に限らず、コーチング研修やアクティブラーニング研修についても、目的があり、カリキュラムがあり、模範解答ありきであることが殆どであり、同様のことが言える。このような中で、育ってきた社員は、既存の仕事の枠の中でしか対応できない人材になりがちだ。社会の変化が激しい中で、対応できる人材が育っているか、自問してほしい。

失敗例は、他にもよく耳にする。社内アイデアコンテスト、公募アイデア、アイデア発想トレーニングで満足するケースだ。確かに、これらのイベントに参加したときは、気持ちが高揚するかもしれない。しかし、その効果が持続し、本当にそのアイデアが採用され、事業としてものになったことがあっただろうか。

新規事業を創るためのことは、教えられるものではない

ミッションを与えるだけでは、新たな事業はつくれない。パッションが大事である。最も、大事なことは、本気で考える環境をつくることだ。受動的ではなく、メソッドに依存してもいけない。新規事業開発に正解や模範解答はないからだ。自ら探求することが、本質的に重要である。必要となる分野は、それまでに経験したことのない、あるいは関心のなかった、全くの異分野かもしれない。

社員にこそ投資を

人材を育成し、新規事業を生み出すにはある程度の時間や資金がいる。それらの必要性は机上では理解していても、実態としては、育成に十分な時間も資金も、かけていない。その一方で、巨額の海外企業買収や、ベンチャー企業への投資、ファンドへの参加を、新規事業を獲得する手段として行っている企業が散見される。

もちろん、買収や投資といった戦術自体を否定するものではない。未来をしっかりと見据えた構想に基づく、適切な戦略の下であれば実行されるべきだが、最近の日本の大企業での出来事を振り返れば、巨額かつ安易な買収や投資ではなく、社員に投資をもう少ししても良いだろう。

事業構想大学院大学の取り組み

本学では大別して、事業構想カリキュラムを体系的に修得し、構想と構想計画をつくることができる修士課程(MPD:事業構想修士。2年間、平日夜間と土曜昼間)と、絞り込んだ特定テーマのもとで取り組むプロジェクト研究(1年間、月2回)の2つのコースが用意されている。

その中で取り組むことは、経営学の一通りの専門的なスキル修得を目的とした講義を聴き、膨大な書籍や論文を読み、レポートを提出し、発表をすること――ではない。本学で取り組むことは、自身あるいは自社の事業構想の研究を行い、実現可能な構想計画に落とし込むことである。その研究プロセスの中で、必要と思われる経営学や専門分野の知識を身に着けていく。それも、教授からの理論やケーススタディに関する講義だけで修得するのではなく、企業経営者、実務家、官僚、専門家、科学者、哲学者などを招聘し、最先端の理論や第一線で活躍している人の考えから、自身の構想に落とし込んでいくのである。(修士課程で、年間150人以上のゲスト講師が登壇している。プロジェクト研究を加えると、数百名のゲスト講師が毎年本学に訪れている)

これらの講義や研究の中で、常に最も基本的な事項として問われるのは、その事業の理念であり、存在意義だ。そこには、どんなに収益性の高いビジネスであっても、社会の一翼を担うものでなければ、継続性はなく、事業とは呼べないという考え方が根底にある。

また、「自社の経営資源の深い洞察と理解」をしながら「未来社会、テクノロジー」を捉え、事業の種を発見していく。もちろん、それを助けるアイデア思考法を身に付けるカリキュラムを組んでいる。

このような場で、院生やプロジェクト研究員は、アイデアを出し続ける刺激を受ける環境に身を置き、事業アイデアを実現するための知識を身に着け、多様な人材とのアイデア創発を行っていく。興味を持たれた方は、ぜひ、セミナー&説明会に参加していただきたい。

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