交通ビッグデータが観光の未来を変える

ナビゲーションサービスで培ってきたデータ・技術・ユーザー基盤を活かし、自治体が抱える課題を解決するナビタイムジャパン。 同社が導き出す訪日観光施策とは。

野津 直樹
ナビタイムジャパン 交通コンサルティング事業

2020年に向けて、さらなる増加が見込まれる訪日外国人観光客。その多くが足代わりに使用しているのが電車だ。しかし、縦横無尽に張り巡らされた「路線図」は迷路も同然。乗り換え時に迷子になることも多い。

そうしたインバウンド需要をサポートするため、ナビタイムジャパンが提供するのが外国人向け乗換・観光案内アプリ「NAVITIME for Japan Travel」だ。英語・中国語(簡体字/繁体字)・韓国語で乗換検索や無料Wi-Fiスポット検索などができるサービスで、ダウンロード数は累計80万件、月間8万5000人以上の訪日外国人に利用されている。同社では利用者の同意のもと、国籍や訪日回数などを尋ねるアンケートを実施。データ取得を許可した者からGPS測位データを取得し、行動分析に活用している。またデータの一部は、経済産業省「地域経済分析システム(RESAS)」に提供されている。

直近1年間の動きを分析すると、2016年はゴールデンルートをはみ出しさまざまな場所を旅する外国人の移動需要が見えてくる。野津氏はその傾向は訪日回数が多いほど顕著に見られるといい「リピーターは札幌市や福岡市といった地方の中心都市にピンポイントで訪れている」との見方を示した。

膨大な移動データを地方創生の起爆剤に

同社では自治体と連携し、さまざまな取り組みを加速させている。たとえば、奈良県には東大寺と奈良公園という人気の観光資源があるものの、地域経済に貢献できていないという課題があった。そこで、近畿地方整備局と滞在分析を実施すると、夜間は外国人が一気に減ることが分かった。野津氏は「夜は観光する場所がないと判断され、ご飯も食べずに大阪・京都に帰っている」という仮説が浮かび上がったと述べ、「ローカルな体験をしてもらうため、体験カタログなどが掲載されているデジタルサイネージを利用し、消費の拡大を図った」と説明した。

自治体のPR動画がブームとなるなか、同社は外国人クリエイターと盛岡市を視察し、発掘した観光地を巡る旅を外国人クリエイターとともにPR動画を制作したと紹介。そのうえで、「ビッグデータは観光資源を発掘する手段ともなりえる」と強調した。

交通ビッグデータは国内観光分野でも大いに役立つ。たとえば、利用者の同意のもと取得される1秒間隔のカーナビのGPSデータを解析する「プローブ分析システム」を用いれば、ボトルネック交差点の抽出や信号制御の見直しに活用できるという。また、「経路検索条件データ」を用いた事例として埼玉県の西武球場前が検索ランキングで急上昇したと話した。その理由は「人気アイドルグループのライブが始まる1時間前だった」と種明かしし、実際の移動より前に検索されることから突発的な移動需要を予測できると述べた。

前例のないインバウンド時代が到来するというとき、大きな力を発揮するのが同社の資産である交通ビッグデータだ。データに基づき、施策を立案・実行し、効果を測定して見直すなど、観光需要喚起のPDCAサイクルを回す――。環境変化に対応する術はその繰り返しにあるといえそうだ。

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