2016年10月号
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地方創生の検証と対策

地方創生スタートから2年 成否を分けるカギはどこに?

嶋田 淑之(自由が丘産能短期大学・教員、文筆家)

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「地方創生」が政策として掲げられて早2年。各地の状況をつぶさに観察すると、停滞ないしは衰退し続けるところと、上向くところの「差異」が徐々に顕在化してきている。それは何に起因するのか? 創生の成否を分けるカギについて、具体的に検討してみたい。

創生成功のカギ「長期的視点」

現政権が推進する「地方創生」は、国として大きな枠組みを用意し、必要に応じてサポートを行うものの、基本的には、各地域が、自らの叡智によって、その地でサバイブすることを求める点に特徴がある。

ここで言う「叡智」は2つある。

1つ目は、「長期的視点」である。「国家100年の計」というが、地域の創生も本来それに準じるものだ。50年後、100年後にどんな地域になっていたいのかが“明確”で、地域内外の人々が、「自分もその一助となりたい」と思えるほど“魅力的”な、そして“環境変化の風雪に耐え得る力のある”理念・哲学をもった長期的プランニングが望まれる。

ザルツブルク音楽祭を核に、音楽・文化の街として世界中から観光客が訪れるオーストリアのザルツブルク。約100年前は、何の特徴もない寂れ果てた街だった Photo by Wikimedia

一例を挙げよう。オーストリアのザルツブルクは、“名実ともに世界一”と評される祝祭(=ザルツブルク音楽祭)を核に、多数の自然・歴史遺産を擁する人気観光リゾートである。しかし、100年近く前、同市は、人口3万の過疎の町であった。第一次大戦に破れた祖国オーストリア(ハプスブルク帝国)は、欧州の周縁部の1小国になり下がり、ザルツブルクも、“モーツァルト生誕地”という以外、何の特徴もない寂れ果てた街だったのである。

ところが、ここに、「演劇界の皇帝」マックス・ラインハルト、文豪フーゴー・フォン・ホーフマンスタール、大作曲家リヒャルト・シュトラウスが集い、“モーツァルトの音楽と演劇理念の復権・再生”を目指し、1920年夏、「ザルブルク・フェスティバル」(ザルツブルク音楽祭)を創始する。

そして、その理念の延長上に、やがて、冬の「モーツァルト週間」(1956~)、春の「復活祭音楽祭」(「指揮界の帝王」ヘルベルト・フォン・カラヤンが創始、1967~)などの音楽祭群を加えてゆく。さらには、ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)の舞台となった景勝地「ザルツカンマーグート」をも包摂し、ザルツブルクは、世界的観光リゾートへと成長・発展していったのである。

明確で魅力的な理念・哲学をもった長期的視点からの「創生」とはこのようなものだ。

翻って、日本の地方創生の現実はどうだろうか?

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