2016年9月号

ふるさとグローバルプロデューサー

地域を巻き込み、活性化させる力

小塩 篤史(事業構想大学院大学教授、研究科長)

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地域の多くの関係者を巻き込み、地域の特色を活かした地域資源や産品をブランド化し、個性的商品・サービスを創出したり、海外などの域外市場に販路を獲得したりするとともに、商品ニーズを高め、ファンを呼び込むことのできる、資質や能力を有する人材(=ふるさとグローバルプロデューサー)が求められている。その人材に求められる力とは何か。

地域の特産品や伝統工芸品、固有資源を活かした商品を、海外を含めた域外に売り出していくためには、何が必要だろうか。

よくあるケースだが、「自分の商品や自社商品さえ、何とか売れれば」、と考えがちだ。それは、自分や自社の利益を最優先するエゴというより、「何とか売上を上げねば」という責任感から来るのかもしれない。しかし、自分や自社だけで売りだそうと思っても、小さく限られた経営資源では、自ずと限界がすぐ来てしまう。従来の限界を越えて行くには、自分や自社が持っていない力が必要だ。

一方で、購入する顧客から見れば、何に魅力を感じるだろうか。いまや、高性能な商品が低価格で溢れる時代で、明確に機能的な優位性を持つことは極めて困難だ。大量生産をせず、少量を遠方から手間暇かけて運んでくる地域産品は、高価格にならざるを得ない。

そうしたなか、鍵となるのが地域ブランドであり、その地域産品がどのようなストーリーをもっているか、である。ストーリーとは、生産者がどのような人柄で、地域の気候・風土・歴史性はどうで、原料はどのように育まれているか、伝統を守るためにどれだけの人が関与し苦労してきたか、などその地域産品一つ一つしか持ち得ない。こうしたストーリーを引き出し、発信し、地域ブランドを形成していくには、自分や自社だけでは、到底なし得ることではない。関係する企業や行政、支援する金融機関、報道してくれるメディア、研究し客観的な視点をもたらす専門家、長年贔屓にしてもらっている顧客、住民など、あらゆる関係者の協力が欠かせないだろう。

ただし、気をつけなくてはならないことは、協力を得るプロセスで、地域資源を総花的で幕の内弁当的に、平等に並べてしまい、何の魅力もないものになってしまわないようにすることだ。構想を持った上で、地域の限られたパワーを、ある特定の資源に集中投下することで、一点突破を図り、一定の段階でほかの魅力を徐々に伝えていくなどの戦略が必要となる。なぜなら、域外の人に伝えられる情報量は、どうしても限られたものにならざるを得ないからだ。

この一連のプロセスを進めていくうえで最初に行うべきことが、「地域のひとびとの巻き込み」である。ここで、「地域の多くの人を巻き込む」という点を改めて考えてみたい。地域活性化に関しては、これまでも様々な成功事例が存在する。地域の伝統産品や特選品、観光地をPRし、地域活性につなげた事例も多い。すでにブランド化されている地域産品がある場合は、地域全体が巻き込まれているケースも多いが、潜在的な地域資源などを活用する場合は、地域全体が巻き込まれていないケースも多い。

 

ふるさとグローバルプロデューサーによる関係者の巻き込み

販路を開拓するほど、より強固な地域内の巻き込みが必要となる。逆に、地域の巻き込みがあってこそ販路開拓が円滑に進む

 

地域の巻き込みが必要なのは、第一に、人のつながりを生み出すことで、「地域資源」の力を最大限にいかすことができる。地域には様々な資源が眠っている。地域の施設や企業、土地や観光地、特産品など目に見える資源に加えて、地域の絆、ネットワーク、ブランド、文化、歴史など潜在的な資源も存在する。これらの資源は、最終的には「ひと」にいきつく。特に潜在的な資源は「ひと」に紐づいて存在していることが多く、潜在資源をフル活用するには、ひととのつながりが何よりも重要である。資源は単体で活用するよりも組み合わせることで力を増大させる。地域全体の文化・歴史を紐解きながら、ストーリーを描き、そこから地域を眺めると、活用可能な資源はまた拡大する。そして新しい組み合わせを作り出すことで、いままで以上の価値がそこに帯びてくる。

第二に、自らのプロジェクトの継続のためにはリスクを減らす必要があるからである。地域という比較的閉じた社会システムを想定した場合に、反対する利害関係者が存在することは、事業の持続可能性を考える際に大きなリスクとなる。地域の中では、利害関係者は大きく変動しないため、当初の関係性は継続すると考えるべきである。その中で、行政は担当者などが入れ替わる可能性がある。その中でもプロジェクトを継続するためには地域全体の巻き込みが不可欠である。

第三に、地域資源を海外に展開するために、地域全体の応援が何より大事だからである。地域の事業者は比較的規模が小さいところが大きい。単独で行動するよりも、地域全体で共通のビジョンを持ちながら、そのビジョンに向けてともに努力をするほうが、より効果が大きく、効率的でもある。ふるさとの資源を海外に展開することで、地域の未来構想にどのようなよい影響を与えうるか、これを示すことができれば、地域が一つの組織体のようにプロジェクトを後押ししてくれる。

地域の巻き込みを行う上で、重要なのは、巻き込みのための地域の未来構想を持つこと、そして地域の関係者の把握である。事業構想においてと同じように、地域のひとびとを巻き込むためには、自らが思い描く「地域のあるべき姿」を明確に描き出し、それを共有することが必要である。未来のイメージを伝えるビジョンこそがひとを巻き込むために、もっとも重要な要素である。さらに、地域の関係者をくまなく把握し、そのビジョンを伝えながら、関係性を構築していく必要がある。そこには政治的な思惑が絡むことがあるかもしれない。それを乗り越えるのは、地域全体に貢献するという強い意志とその具体的なイメージである。ふるさとプロデューサーが地域活性化に貢献するためには、まず何より地域全体を巻き込み大きな動きを作り出すことから始める必要がある。

ふるさとグローバルプロデューサーは、ふるさとプロデューサー等育成支援事業において、育成しています。当事業は、中小企業庁の補助事業として株式会社ジェイアール東日本企画が実施しています。同社は、カリキュラムの作成等を学校法人日本教育研究団事業構想大学院大学に委託しています。

 

 

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