Netflix、Hulu 異業種参入に、テレビ業界が動き出す

若年層を中心にテレビ離れが進み、情報源も多様化している。Netflix、Huluなど、好きな時間に動画視聴ができるビジネスモデルが確立していく中で、既存のテレビ局は、どのようにビジネスを革新していくのか。

テレビ業界は、技術的には地上波完全デジタル化や受信機器の多様化、高解像度の4K/8K放送開始と、着実に進化しているが、今後の見通しは明るくはない。元NHK専務理事の吉国浩二氏はその要因として、視聴者層の変化を指摘する。

吉国 浩二 元NHK専務理事

「NHK放送文化研究所『2015年 国民生活時間調査』によれば、1日15分以上テレビに接している者の割合は1995年が92%、2015年は85%でした。それ以上に厳しいのは新聞で、52%から33%へ急減しています。その反対に成長著しいのはインターネット。1995年は調査値がないのですが、2005年は13%、2015年には23%に躍進しました」

2015年における年代別の平日のメディア接触時間も興味深い。10代はテレビが1時間36分、新聞がわずかに1分、インターネット43分。40代はテレビ2時間34分、新聞8分、インターネット33分。60代はテレビ4時間11分、新聞26分、インターネット17分。年代が高いほど、テレビや新聞を好み、若年層はインターネットにかなりの時間を割いていることが分かる。

「新聞やテレビは情報の信頼性で支持されてきましたが、若年層は情報の出所にこだわってはいません。『さまざまなメディアの情報を見比べる』ことが当たり前になり、スマホを使っていつでもどこでもインターネットにアクセスできる環境にいますから、『必要な情報は自分で選びたい』と考えています。そうやって自分のペースで情報に接している若年層に言わせれば『テレビはたるい、うすい』そうです」

先述のNHK放送文化研究所では動画サイトの利用についても調査を行っている。13~19歳および20代では動画サイト利用者が8割超。40代でも6割以上が利用し、ヘビーユーザーも少なくない。利用シーンはテレビ視聴以上に多様だ。たとえば、20代は通勤通学中に短時間の投稿動画を楽しみ、帰宅後は食事しながら見逃したテレビドラマを視聴し、夜は自室でお気に入りのBGMを聞きながら好きなジャンルの動画を次々と視る。映像と触れるスタイルが様変わりしたと言っていい。

急成長するVODビジネス

こうした変化に対応して、昨年はVOD(ビデオオンデマンド)サービスが急拡大した。全世界6500万人超の会員がいるとされるアメリカの「Netflix」が日本でも定額サービスを開始し、アマゾンも参入。レンタルビデオ業界ではTSUTAYAに続いてゲオチャンネルも誕生。既存の業者ではdTVリニューアルを実施するなど競争が激しくなっている。

「民放各社のVOD戦略も新段階に入っています。在京民放5社は『TVer』という共同のポータルを作り、番組を放送後一週間程度無料で配信するサービスを始めました。さらに民放各社では、視聴者の囲い込みを狙って、米国発のHuluを傘下に収めた日本テレビなど自社のVOD部門強化を進めています。その一方で、外部のVODに番組を提供する動きも拡大し、放送局と外部業者の間で競合と協調の動きが複雑に絡みあって展開しています」

さらに、「今後は、リアルタイム配信も活発になる」と、吉国氏は続ける。

「アーティストのライブやスポーツ中継などジャンルに特化したチャンネルもありますし、放送局系では日本テレビが24時間生放送チャンネル『テレビのムコウ』を始めました。テレビ朝日はサイバーエージェントとの協業で『AbemaTV』を立ち上げています。放送と同じ番組をインターネットに同時配信する試みも始まっています。NHKは、大災害時等には、ニュースをネットでも流しているほか、個々の番組だけでなく、放送全体を試験的に配信する取り組みも始めています」

動画配信サービスの主な動き(2015年〜)

ビジネスモデル転換期

このように放送を取り巻く環境は時々刻々と変化し、テレビ業界は今まさにビジネスモデルの転換点にある。転換を後押しするのは他でもない、経営に対する危機感だ。ネットとの融合の進展で異業種からのコンテンツ配信への参入が相次ぎ、これまで寡占体制で経営が安定していた放送業界は一転して厳しい競争にさらされる。

視聴者のテレビ離れに加えてVODや録画視聴の増加でリアルタイムで放送を見る人の減少が続き、CMに依存した民放のビジネスモデルは抜本的な見直しを迫られることになるだろう。また、これからは人口と世帯減少によってマーケット自体が縮小傾向にあり、受信料で成立しているNHKも経営は厳しくなることが予想される。吉国氏は「既存の放送モデルでは対応できないことは明らか」だと断言する。

現状をいかに打破するか。制作と送出の分離、ネット利用者をとりこめる番組や配信方法の開発、放送外のプラットホームとの連携など、さまざまな策が考えられるが、やはり「最後はコンテンツ勝負」だという。

「生き残りの鍵はスマホ世代にただ追随するのではなく、放送局自身が、時代の流れ、いまのネット社会に必要なもの、欠けているものを認識し、ネット時代に放送が提供する新たな公共価値を創造していく事が必要です」

吉国 浩二(よしくに・こうじ)
元NHK専務理事

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