温泉地再生へ、原動力は「女将」 表舞台に挑む女性たちの決意
古くから、旅館の営業は主(あるじ)である男性の仕事であった。しかし、あわら温泉では20年も前から女将たちが表舞台に立ち、活躍している。数々のイベントを仕掛け、オリジナルの地酒を開発。安倍首相への表敬訪問も実現した。
「関西の奥座敷」とも称される、開湯130年以上の歴史を誇る芦原(あわら)温泉。豊富な湯量で各旅館が自家源泉を持つことから、温泉の共同管理という仕組みがなく、そのぶん、かつては他の旅館との協力体制がない状態であった。
「女将どうしも、立場が同じで理解し合える存在のはずなのに、昔は会えば挨拶する程度でした」と旅館『白和荘』の女将、立尾清美氏は振り返る。そんな中、24年前、「一度みんなでご飯でも」と女将たちが集まる企画が立ち上がった。「日々の愚痴話でもしてくれば?」と家族に背中を押されて、“おしゃべりの会”は重ねられた。それが、『あわら温泉女将の会』の結成につながっていったのである。
表舞台へ、積極的に情報発信
会の始まりから5年、転機が訪れる。97年のナホトカ号重油流出事故だ。風評被害がひどく復旧の目途も立たない状態だったが、多くのボランティアの助けにより早々に回復。女将たちが関西のメディアに出演し感謝を伝えると、意外な波及効果が現れた。
「女将は旅館の中にいるもの」という常識がある中で、表に出始めた女将たちは世間の注目を集め、イベントへの出演依頼などが舞い込むようになった。当時は全くの受け身で、「宿をおろそかにせず、来た依頼をできる範囲で」という気持ちと、「あわらのためなら」という使命感のようなものが入り混じっていたが、女将たちが自覚的に活動する分岐点になったことは間違いない。
インターネットの活用も先進的だった。会がホームページを開設したのは、インターネット黎明期の2000年。
「本当に幼稚なもので、今見ると笑えますが、歴史を振り返るという意味もあって、あえて大きくは変えていないんです」
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