事業構想はアートかサイエンスか 「模倣」と「逆転」が創造のカギ

科学者は「模倣の発想」を多用し、芸術家は「逆転の発想」を用いる傾向にあることが、研究の結果、明らかになりつつある。企業家の発想のパターンも、「科学者型」、「芸術家型」などに分けられ、個々が得意な発想法に磨きをかけている。

「事業構想」というのは、アートなのかサイエンスなのか。一刀両断にできないまでも、興味深い問いかけだ。

経営学でも、企業家はサイエンティストのように分析して発想しているのか、あるいは、アーティストのように発想しているのかについて議論されてきた。海外の学術論文でもアイデア創造についての研究が進み、「発想法」がちょっとした話題になっている。

この発想法、サイエンティストとアーティストとではずいぶんと異なることが私の研究室の調査でわかってきた。分野にもよるが、どちらかと言えばサイエンティストは遠い世界からの「模倣の発想」(アナロジー)を行い、そしてアーティストは「逆転の発想」を多用する傾向にあるようだ。たとえば、ノーベル賞を受賞した博士たちはアナロジーが得意だ。逆に著名なポップアーティストたちは、逆転の発想から創作していたりする。

模倣と逆転、互いに対極をいくものであるが、これらは創造性における2大発想法である。企業家も、実は、これらの発想法を活用している。学術的な作法にしたがって調べてみると、成功した企業家は、これら2つを多用していることがわかった(井上研究室・大学院生とゼミ10期生の調査)。

図1「得意な発想法」の比較

オズボーンの発想法の分類に照らし合わせて、発言内容を数えて仕分けすると、明確な傾向が読み取れる結果に。

出典:井上達彦教授・作成資料

※パイロット調査のデータソースは、湯川秀樹(2011)『旅人 ある物理学者の回想』角川学芸出版、小倉昌男(1999)『小倉昌男

経営学』日経BP、岡本太郎(1993)『自分の中に毒を持て

あなたは常識人間を捨てられるか』青春出版社、三木谷浩史(2009)『成功のコンセプト』幻冬舎、鈴木敏文(2014)『挑戦我がロマン』日経ビジネス文庫。

アーティストの発想法

「芸術は爆発だ」という岡本太郎さん。代表作「太陽の塔」はあまりにも有名で、ポップアーティストの金字塔とも言える。既成の体制の逆を行くような彼の作風は、どうやら芸術家としての思考様式と密接な関係があるようだ。「人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積み減らすものだと思う」(『自分の中に毒を持て』青春出版社p11)と語っている。

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