ローカル線を再生へ、移動する「体験」をエンタメ化

トンネル壁面をスクリーンにして映像を投影する「トンネルシアター」など、ユニークな施策を続々と打ち出し、新しい「旅の体験」を提供する会津鉄道。大石社長は、アイデアが生まれやすい組織体制を整備し、収益改善を目指す。

会津若松~会津田島間を運行するイベント列車「お座トロ展望列車」。車内から絶景を楽しめる

「大学卒業から定年まで国鉄(JR東日本)に勤めたのですが、退職後、東北総合サービス(駅ビルで飲食店などを展開)に入社したことが、一番の転機でした」

会津鉄道の社長、大石直氏は自身のターニングポイントをこう振り返る。鉄道マン一筋で歩んできたキャリアからサービス業に転身。かなりの戸惑いがあったことも想像できる。

しかし大石社長は、どちらも他社よりも顧客を満足させ、選んでもらうという点で同じだという考えに至った。

大石社長のモットーは「喜動(きどう)」。自身の造語で、「客の喜びを自分の喜びとして、喜んで行動する」という思いが込められている。

大石 直 会津鉄道 代表取締役社長

ミニカンパニーで社内改革

1986年、国鉄がJRになった際、一度は廃止が決まっていた赤字路線を第三セクターによって存続させたのが会津鉄道だ。大石社長に課せられた使命は、「地域に貢献できる鉄道として存続すること」、そして「赤字を減らすこと」。

雪深い会津地方は、道路が通行止めになり自動車が使えなくなることもある。しかし会津鉄道は自社で除雪等の設備やノウハウを持ち、熱い鉄道魂を持った社員のおかげで滅多なことでは止まらないという。

「いざというとき、会津を陸の孤島にしないために、会津鉄道はインフラとして重要な役割を担っています」

大石社長は2008年に就任したが、初めの2年間は何をやってもうまくいかず、苦労したという。改革が進み始めたのは、ミニカンパニー制度の導入がきっかけとなった。ミニカンパニー制度とは、社内に4つの会社をつくり、社員が通常業務の他にミニカンパニーの仕事もこなす仕組みだ。社長や専務や経理もいて、小回りのきく組織体制の下、さまざまなアイデアを計画・立案・実施することができる。

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