ビジョナリーワードが競争力の根源に 未来は言葉でつくられる
まだ世の中にない何かを生み出そうとするとき、新しい言葉が必要になる。優れた経営者や起業家は“ビジョン”を実に的確な言葉で表現し、人々を魅了している。求心力を持つ言葉を生み出す発想法から、言語化の技術までを語った。
未来をつくった言葉たち“ビジョナリーワード”
--新しい時代が始まるとき、そこには必ず新しい『言葉』がある。そう語った細田高広氏は、広告制作にとどまらず、経営層と向き合って数々の企業のビジョン開発に携わってきた異色のクリエイターだ。
ひとつの例として、スケッチを見せた。このスケッチが掲載されたのは、1972年、アラン・ケイによって発表された論文。タブレット端末のようなスケッチが描かれ、初めて“パーソナルコンピュータ(PC)”という言葉が使われた。当時の常識では、コンピュータは巨大で、複数人で共有するものであり、これからさらにコンピュータは巨大化すると考えられていた。そのコンピュータを、個人が所有して、子どもまでも簡単に使えるという発想に誰もが驚いた。その後、スティーブ・ジョブズがアラン・ケイのビジョンに刺激されてMacintoshを作った。そして40年の時を超えた今、私たちはタブレットPCを手にしている。言葉が時代をつくるきっかけになった事例である。
他にもSONYは“ポケットに入るラジオ”という開発ビジョンを掲げ、社の運命を大きく変えるトランジスタラジオを生み出した。“女性の体を自由にする”という言葉を掲げたココ・シャネルは、コルセットの追放に始まり、ショルダーバッグやリップスティックの発明など、女性のファッションに大きな革命をもたらした。「どの事例でも、現実になる前に言葉がありました。新しい商品、サービス、時代が生まれる時には、必ず新しい言葉が生まれます。まだ、未来を写せるカメラはありません。言葉だけが未来の風景を描く手段となり、人と思い描いた未来を共有することを可能にするのです」
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