2014年12月号

地方創生 2つの輪

長期滞在したい国8年連続1位 マレーシア・ペナン島の観光戦略

白石史郎(地域活性学会事務局)

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短期型観光旅行から1週間以上の長期滞在へのシフトを目指す観光地が増えている。しかし、受け入れ態勢はまだまだこれからといった状況である。長期滞在のお手本といえるマレーシア・ペナン島の事例から、成功の条件を学ぶ。

長期滞在者の誘致に成功するマレーシア・ペナン島 Photo by Marcus Tan

ペナン島は、マレーシア有数のリゾート観光地で、ハイテク産業の集積地としても知られる。人口は75万人で、中国系、マレー系、インド系など人種も多様である。

18世紀後半当時の統治者との条約で、 イギリスに植民地として割譲されていた歴史があり、中心市街地は「ジョージタウン」と呼ばれている。東西を結ぶ貿易拠点として発展し、今なお、イギリス植民地時代のコロニアル調の建物や、マレー、中国、インド式の建物が混在して残されている。エキゾチックな雰囲気は、「東洋の真珠」とも呼ばれ、ジョージタウンは2008年にユネスコの世界文化遺産に指定されている。

また、料理も中華料理、マレー料理、インド料理、イタリアン、フランス料理、日本料理などがそろっており、高級店から屋台村まで総じてレベルが高く、長期滞在者にとっても飽きることがない。

市場の様子。豊かな食文化も滞在の理由になる

年間約280万人の外国人観光客が訪れ、日本からは3-4万人が訪れている。

ペナンに在住する日本人は、外務省海外在留邦人統計によると約3500人。そのうち2000人は企業等の駐在者とその家族で、1500人が永住者と長期滞在者。観光ビザで滞在する場合も多い。最近は北海道から冬季だけペナンで生活するケース、定期的に滞在して、インターネットと電話で仕事をこなすケースも増えてきている。

ビーチ沿いにはホテルや長期滞在者向けコンドミニアムが立ち並ぶあ

医療体制、食、ビザ長期滞在したくなる仕掛け

マレーシアは一般財団法人ロングステイ財団の調査によれば、海外で長期滞在したい国として8年連続で第1位となっている。

マレーシア政府は、2002年から「マレーシア・マイ・セカンドホームプログラム(MM2H)」を実施しており、この制度によるビザを取得すれば、10年間自由に滞在できる。他国で適用されている「年金者用ビザ」や「退職者用ビザ」とちがい、年齢制限もなく、延長も可能である。2012年現在、日本人は2445名が取得しており、取得者数は世界一である。

政情も安定しており、治安面での心配もあまりない。また、高い医療水準が整備されていること、周辺国や日本へも格安航空会社(LCC)が就航していることも魅力だ。シンガポールならば数千円で行けることもある。

滞在先は大きく、長期滞在者用のコンドミニアム(マンション)と、ホテルに分別される。中心市街地のジョージタウンから車で30〜40分ほどで海岸沿いのブンガ地区やビーチリゾートで有名なフェリンギ地区に行くことができる。

長期滞在者は富裕層やリタイア層だけではなく、現役世代で定期的に訪れ、将来に備えるセミリタイア層もいる。

ホテルも一般の宿泊者に混じって長期滞在者にも対応できるようになっている。部屋によっては簡単なキッチンや調理器具を備えている。

スーパーでは日本の食品も簡単に手に入る

自炊をする場合も近くに新鮮な野菜、肉、魚や日用雑貨を扱う市場がある。日本の調味料や食品を取り扱っているスーパーもある。自炊をしなくても屋台方式で世界各国の料理が手頃に食べられるフードコートがいたるところにある。

医療機関は高度な医療設備完備の救急病院(市立病院)があり、日本語が話せるスタッフも常勤している。契約をすれば、24時間担当スタッフへ携帯電話で連絡を取ることも可能である。また、急病でなくても健康診断にも対応している。

日本語対応可能な市立病院

ひとりよがりのPRではなく滞在者視点のマーケティングを

一般財団法人ロングステイ財団は、長期滞在について、海外では2週間以上、国内においては1週間以上の滞在と定義している。また、就労目的ではなく、余暇を目的とすること、現地での生活を目的としていることを前提としている。

旅が「非日常の空間で、非日常の日々を過ごすこと」に対し、ロングステイは「異日常の空間で日常生活を体験すること」としている。

国内で長期滞在を希望する先としては、1位沖縄県、2位北海道、3位京都、4位長野である(ロングステイ財団調べ)。滞在先の選定理由は、(1)気候がよい、(2)好きな地域である、(3)環境がよい、が上位に挙げられている。

国内においても長期滞在や定住促進の優遇策や支援策を講じている地方自治体が増えている。なかには沖縄のように、花粉症対策で本土から避難してくる長期滞在者も増加している。しかし、概しては、「おらが町や村はよいところだから来てくれ」といった供給者側の論理で考えられたものが目立つ。

ホテルは簡単なキッチンと調理器具を備え、長期滞在にも対応

マレーシアの事例からは、食における豊富な選択肢(外食・自炊)や、医療水準の高さ、ビザ制度の利便性など、長期滞在者側の視点に立った受け入れ体制の整備が成功のカギであることがわかる。

特に都会に生活する人々がどのようなニーズをもち、何を期待しているのかについて、ハードのみならず、心理面や感覚的な面を含めてよくマーケティングを行い、積極的に取り入れていく姿勢が重要であろう。

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

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