2014年12月号

地方創生 2つの輪

U・Iターンに「新たなトレンド」 地域が人を選ぶ時代へ

後藤千夏子(移住・交流推進機構 統括参事)、森山 忍(移住・交流推進機構 参事)

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政府が掲げる「地方創生」は、もちろん中央だけの掛け声ではない。全国各地で都市部の人材を受け入れようと、さまざまな支援が行われている。時代は「企業の誘致から人の誘致へ」。その成否を分けるのは、やはり「職」だ。

調査によると、移住したいと思う理由の第1位は「自然豊かな環境」。移住に関心を持つ潜在的な人口は多い 提供:ふるさと島根定住財団

地方は転出超過の状態であり、東京一極集中からなかなか抜け出せない。それでは、都市部の人は本当に地方に住みたくないのか。今回、移住・交流推進機構の統括参事・後藤千夏子氏、参事・森山忍氏に話を聞いた。

後藤千夏子移住・交流推進機構 統括参事

東京など大都市居住者の移住意向を示す調査結果が数多く発表されているが、中でも三菱総合研究所が2013年度に行った「人口移動効果をふまえた自治体の福祉政策展開」に関する調査は、東京圏、名古屋圏、大阪圏の居住者6万6964人が回答しており母数が大きい。結果を見ると、引退したシニア層よりも、働き盛りの年代で移住への関心が高いのがわかる。

「移住意向のある人は大都市圏居住者の20.5%。女性より男性で意向が強く、男性の30代以下、40代、50代がほぼ同率で高くなっています。女性は30代以下の意向が19.8%ともっとも高くなっています」(後藤氏)

5人に1人は地方への移住意向があるのだ。では、移住したい理由は何か。全体の約6割が「自然豊かな環境で暮らしたい」だった。地方の魅力は大いにある。地方移住を増やすことは、数字からみれば決して不可能なことではない。

提供:ふるさと島根定住財団

「移住ビジネス」も活発化

人が動くところには、新たなビジネスが生まれる。移住・交流推進機構には、40社ほどの法人会員がおり、自治体とのマッチング支援事業も行われている。たとえば、レストラン検索サイト「ぐるなび」は地元食材を用いた料理を提供するイベントを東京で開催し、地域のファン獲得につなげたり、老舗婚活サイト「エキサイト恋愛結婚」では地方での婚活イベント開催を支援する事業を行っている。

今、移住・交流推進機構には、地域活性化ビジネスに興味を持つ企業からの問い合わせが相次いでいるという。今後、移住に関連した新たなビジネスが続々と生まれそうだ。

また、地方の自治体も、今の状況を黙って見ているわけではない。移住者を支援する各種の支援制度を打ち出している。移住・交流推進機構では、地方に関わる情報発信の窓口としてウェブサイト「ニッポン移住・交流ナビJOIN」を運営。この中では全国の自治体の移住に関わる支援制度を2922件も紹介している。

支援制度は、地域から移住希望者に向けた大切なメッセージだ。ターゲットを明確にした制度設計が求められる。

「制度をつくる前に、今一度、地域特性や固有の資源を突き詰めて、地域の将来像や進むべき方向性を地域全体でしっかりと描くことが重要。そうすることで、どういった人に移り住んでほしいのかが明らかになります。それができれば、支援制度は、未来を託す人材を呼び込むのに大きな効果を発揮するはずです」(後藤氏)

提供:ふるさと島根定住財団

地域が「人」を選ぶ時代へ

それでは、地方で仕事をいかに見つけるのか。総務省は、一定期間(最長3年)、地域に移住し、地域協力活動を進めてもらう「地域おこし協力隊」という施策を行っている。自治体が都市住民を受け入れ、隊員として仕事を委嘱し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PRや農林漁業や住民の生活支援などに従事しながら、その地域への定住・定着を図る施策だ。

任期終了後はどうなっているのか。データによれば、同じ地域に定住した人が約6割にのぼり、一定の成果をあげている。定住者の9割は、起業・就業・就農しているが、そのうち、起業しているのは1割程度。やはり、地方で起業するのは簡単ではない。

森山 忍移住・交流推進機構 参事

地方に仕事をつくる活動として、起業家そのものを呼び込む動きも盛んになっている。その受け皿の一つは、各地で開かれているビジネスプランコンテストだ。

「たとえば島根県では、松江市、江津市、美郷町、津和野町、隠岐の島町といった自治体のほか、山陰合同銀行といった地元金融機関でもコンテストが開かれています。江津市のビジネスプランコンテスト『Go-Con』は、受賞者を継続してサポートする体制を充実させることで成功をおさめており、すでに起業した例も多数出ています」(森山氏)

従来、自治体は企業誘致に力を入れてきたが、これからは人材誘致が注目される。ビジネスプランコンテストは、限られた予算の中で支援対象にメリハリをつけ、見込みのある人に必要なサポートを届ける仕掛けでもある。

後藤氏は、今後の移住のトレンドとして、受け入れ側が移住者を選ぶ動きが増えていくと見ている。

「移住を成功させるためのノウハウが各地に蓄積されていく中で、どのような人材が自分たちの地域に適しているのかも見えてきます。地域が選ばれる時代から、移住者を選ぶ時代に変わっていくと思います」

調査によると、移住したいと思う理由の第1位は「自然豊かな環境」。移住に関心を持つ潜在的な人口は多い

広々とした住環境も地方の魅力。定住の促進、交流の拡大を図るため、物件の情報を提供する「空き家バンク」を運営する自治体も増えている

 

移住のターゲットを明確に

まずは、どのような人に移住してほしいのか、ターゲットを明確にすることが必要だ。

その土地に縁のない人が移り住んでも、地域に溶け込むのに苦労することが多い。たとえば、先祖三代前までさかのぼり、その土地の出身者には、家や土地を優先的に取得できるような仕組みにすることも考えられる。そして、1年に何日かでも地元に滞在するようになれば、活性化につながるだろう。

理由がなければ、人が動かない。助成制度を整備するだけでなく、人が動きたくなるような仕掛けを考えることが必要だろう。

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

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