発・着・想の作法と手法

「発・着・想」は事業構想の肝である。自分自身が本気で取り組む事業のアイデアをどのようにうみ出し、育てるのか。3つのキーワードを軸に「発・着・想」の基本的な考え方を示したい。

発・着・想のためのキーワード

 

事業構想学は、「事業構想」を「学ぶ」ための学問である。そのめざすところは、事業構想を学問的に捉えることではなく、「事業構想」をめざす人の「学び」を促すための仕組みをつくることにある。そしてその基本コンセプトとして、「発・着・想」「構想案」「フィールド・リサーチ」「構想計画」「コミュニケーション」というプロセスがある。このサイクルをいくども展開することで、社会に貢献する新しい事業をうみ出していく。これまで、その基礎として未来思考が重要であり、さまざまな異なる背景をもったひとびとが集まる場づくりの重要性をのべてきた。今回は、事業構想の肝ともいえる「発・着・想」における基本姿勢についてかんがえてみたい。今回のキーワードは「守破離」と「Think Different」、そして「創造的思考法」である。

アイデアをうみだす発着想

 

「発・着・想」は、発想、着想、想像を意味している。アイデアを発想し、着想し、想像する。アイデア、閃き、気づきがたくさんうまれ、その中から未来を構築する新しい理想の構想案がうまれてくる。発想と着想はどちらも「アイデアをうみ出す」という点で同じ言葉ではあるが、発想は自分自身の中から湧き出してくる思いつきであり、着想は外部にある気づきの種が自分の中におりてくる思いつきである。想像は、実際には経験をしていないことを、心の中に思い描くことである。顧客の気持ち、社会の人びとの姿を想像することは、あらゆるアイデアワークの基礎ともいえる営みである。事業構想の主題となるアイデアをうみ出すためには、絶えず想像し、発想し、着想することが必要である。

 

「アイデアをうみ出す」と聞くと、それは一部の創造的・天才的な人物の営みであるような気がするかもしれない。たしかに、社会全体の価値観を覆すような創造的・独創的な営みは、一部の天才によることも多い。しかし、事業構想の「発・着・想」は一部の天才にかぎられた才能ではない。社会の課題をしっかりと見つめること、日頃からアイデアに対して感受性を持つこと、しっかり情報収集をすること、顧客の気持ちを想像すること、これらの積み重ねの中で、新しい事業構想のアイデアが自然に生まれてくるものである。「発・着・想」こそ事業構想を進めていく上での始点であり、すべての事業構想家が通るべき道である。

 

それでは、「発・着・想」の力は鍛えることができるのであろうか。人間や社会、科学技術、経済活動など社会を構成する基本的な要素への洞察力は、あらゆる活動の基礎であると同時に、「発・着・想」の基礎でもある。日頃から洞察力を磨くことで、多くの課題を発見し、またアイデアを生み出すための基盤が構築される。日々、洞察力を鍛えることが王道である。ただ、「発・着・想」をおこなう上で有益な心構えがある。ここでは、その中で「守破離」という言葉と「Think Different」という言葉をとりあげたい。

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