2014年4月号

MPDサロンスピーチ

1番にこだわり、決して諦めないこと

出雲 充(ユーグレナ代表取締役社長)

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ミドリムシの栄養価や付加価値に着目したビジネスで急成長する株式会社ユーグレナ。事業構想大学院大学のサロンスピーチに登壇した出雲充社長は、ミドリムシとの出会いや創業時の苦労、起業家へのメッセージを語った。

出雲 充 ユーグレナ代表取締役社長
1980年生まれ。2002年東京大学農学部卒業、同年東京三菱銀行(現東京三菱UFJ銀行)入行。2005年ユーグレナ設立、代表取締役社長に就任。

世界から栄養失調をなくす

私は多摩ニュータウンのごく普通の中流家庭で生まれ育ちました。社長になりたいという想いどころか、ベンチャーという言葉さえ知らない子どもでした。

転機の一つは、大学1年生で初めて海外旅行を経験したこと。珍しい体験のできるところがいいと考え、行き先は南アジアのバングラデシュにしました。当時ここは世界の最貧国の一つです。そこで私は、手足が非常に細くお腹の出ている子どもたちとたくさん出会いました。彼らは米をはじめとした炭水化物ばかりを食べ、タンパク質を摂っていないので筋肉が作れていない。いわゆる栄養失調の状態でした。

ミドリムシ(ユーグレナ)

彼らは空腹ではなく、炭水化物以外のあらゆる栄養素が足りないことに困っている。その光景を見た時、栄養失調を解決したいと強く思いました。大学に戻り、栄養価の高い食べ物や生物について研究を始めます。

そして大学3年生の時、藻の一種であるミドリムシ(学名:ユーグレナ)と出会いました。ミドリムシは植物なので光合成を行える。同時に、他の植物にはない素晴らしい特徴があります。それは動物のように動くこと。ミドリムシは光合成ができ、かつ動物の栄養素をも体内に作ることができる、唯一無二の存在なのです。

500社目で初めて成約

「絶対にミドリムシの時代が来る。世界の問題を解決できる」と惚れ込み、仲間と共に3人で会社を設立しました。私たちは意気揚々として、2006年1月に営業をスタートしました。500社近くを回りました。しかし、ただの1社も買ってくれませんでした。皆興味を持ち、素晴らしいと言ってくれるのですが、最後にはいつも「主要取引先のないところは信用できない」と言うわけです。スタートアップだった私たちに販売実績などあるはずがありません。

石垣島で大量培養したユーグレナ

もうだめかと思った時に、伊藤忠商事が関心を持ってくれました。独自の審査を通れば、主要取引先の有無にかかわらず取り引きすると言ってくれたのです。半年に及ぶ審査の末、2008年5月に晴れて出資・販売・研究支援の契約を結びました。その後はどんどんビジネスが回りだし、2012年には東証マザーズに上場しました。サプリメントや健康食品、バイオ燃料としてもミドリムシは注目されています。

私は伊藤忠商事が認めてくれたときのことを一生忘れません。ベンチャー企業にとって、最初に手を差し伸べてくれる大企業はとても重要です。政府は2020年までに開業率を倍増させようという方針を出しています。しかし大事なのはベンチャー育成ではなく大企業のマインドを変えること、前例のないものを採用していく大企業のアティチュードです。これが変わらなければ、2倍のベンチャー企業が倒産するだけではないでしょうか。

お話したように、私達はミドリムシに惚れ込んで会社を作りました。創業時は事業構想などあまり明確ではありませんでしたから、大変苦労しました。本来考えておくべき構想は2つ存在しました。1つは解決済み、もう1つはこれからの取組です。

さまざまな食品やサプリメントに展開している(右はユーグレナ・ファームの緑汁、左はユーグレナバー)レ

解決済みなのは、「培養の難しさ」です。ラボでの培養では1匹から10億匹への培養に1カ月かかる。10億匹といっても1グラム。とても事業化できる速度ではありません。苦労の結果、ある培養液を発見し、石垣島で世界初のミドリムシ食用屋外大量培養に成功しました。

まだ残っている課題は、「ミドリムシのイメージ」です。どうしても青虫を想像してしまう方がいます。虫ではなくワカメのような存在だと、皆さんに知ってもらうための工夫や戦略的な広報を、初期段階から考えるべきでした。

1%を99%に

これからビジネスを始める人たちには、なによりも1番にこだわって事業を進めてほしいと思います。1番とそれ以外では得られるものがまったく違います。"Winner takes all"という言葉があります。日本で2番目に高い山は北岳ですが、ほとんどの人が知り ません。皆さんの取り組むビジネスは、富士山でしょうか、北岳でしょうか。

では1番になるためにはどうすればいいか。99%成功しない難しいチャレンジを前にしても、成功するまで何回もやり続けることです。1回の成功確率が1%しかなくても、459回繰り返せばうまくいく可能性は99%にまで上がります。私はミドリムシの大量培養に成功するまで1000回以上の実験を繰り返しました。伊藤忠商事に出会うまで、500社への営業を行いました。重要なのは、やるかやらないかです。

私たちの武器はミドリムシだけです。大学3年生のとき、私はいろんな人に「一緒にやらないか」と声を掛けましたが、創業メンバーの2人をのぞいては、ほとんどの人が「そんなくだらないことはやらない」と言いました。しかし私は、この世にくだらないものなんてないと思います。そのことをミドリムシは教えてくれました。

これからも私は、何百回以上もいろんな事業構想を練って、ミドリムシのビジネスをどんどん進めていこうと思っています。

サロンスピーチの模様

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