電力事業インフラの父 松永安左エ門

エネルギー問題は現代社会の重要課題である。戦後、電力の民営化を行い、「9電力体制」を生み出した人物が松永安左エ門。電力産業史に大きな功績を残したビジネスモデルは、需要者目線に徹した基盤構築だった。

電力体制を生み出した「電力の鬼」

東京電力・福島第一原子力発電所の事故以来、「10電力体制」と呼ばれる日本の電力業のあり方が、大きな社会問題となっている。10電力体制が今日の形になったのは1988年の沖縄電力の民営化によってであり、それまでは、北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州の各電力会社からなる「9電力体制」と呼ばれていた。

この9電力体制を生み出した立役者が、「電力の鬼」と畏れられた松永安左エ門(まつながやすざえもん、1875-1971)である。

9電力体制は、占領下の1951年に実施された電気事業再編成によってスタートした。電気事業再編成の結果、第2次世界大戦直前の1939年から行われていた電力国家管理は、廃止されることになった。

9電力体制の特徴は、①民営、②発送配電一貫経営、③地域別9分割、④独占、の4点に求めることができる(これらの特徴は、10電力体制でも継承されている)。9電力体制をその直前の国家管理体制と関連づければ、これら4点のうち、①と②は断絶、③は部分的連続、④は連続ということになる。

したがって、9電力体制を生み出した電気事業再編成固有の意義は、①と②を実現した点、および③を徹底した点に求めることができる。

電力業のあり方を変えた事業構想力

電気事業再編成については、それがGHQ(連合国最高司令官総司令部)の強権を背景にしたポツダム政令によって実行されたことから、立役者はGHQであったという見方が根強く存在する。しかし、電気事業再編成の真の主役となったのは、戦前の民間電力会社・東邦電力の経営者であった松永安左エ門であった。

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