「業務提携」は新規事業やイノベーションに効果的? メリットや注意点とは

(※本記事は日本M&Aセンターが運営する「M&Aマガジン」に2024年7月12日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

企業は、競争力の強化や市場拡大、イノベーションの促進、リスクの分散などを実現するために、業務提携を積極的に活用しています。 本記事では、業務提携の概要、メリット、リスクや注意点、円滑に進めるためのポイントについてご紹介します。

業務提携とは?

業務提携とは、 複数の企業が経営資源を出し合い、1社だけでは解決できない問題を協力し合うことで事業成長、競争力強化を行う施策の一つです。

自社単独では、残念ながら多くの場合、社内で活用できるリソースに限りがあります。事業を推進する際、不足している部分をすべて自前で調達して埋め合わせようとすると、膨大な時間やコスト、そしてリスクが生じます。

業務提携は、新規事業の参入や新製品の開発、業務縮小に伴う社内業務の外注化や販売網の拡大など、各企業の多種類のニーズに応じて色々な形で行われています。 具体的には、企業がそれぞれに持っている技術や販売網、様々なノウハウや人材、設備やブランド力などを提供し合い、お互いが足りない部分を補い合うことでシナジー効果を創出します。

業務提携と資本提携、M&Aの違い

業務提携は、資本の移動を伴わない契約による企業間の協力関係の構築を指します。一方、資本提携やM&Aは資本の移動を伴います。

資本提携は、相手方の経営権の移動が起こらない範囲で株式を取得し、出資によって協力関係を強めることを指します。一方が他方の株式を持つことが一般的ですが、互いに株式を持ち合う場合もあります。資本業務提携を通して業務提携を結ぶ場合、資本業務提携と呼ばれます。

M&Aは、相手方の全株式もしくは過半数株式を取得し、経営権を獲得することを指します。(資本の移動を伴う点で、資本提携も広義でM&Aの一種と言えます。)

業務提携と資本提携、M&Aは他社との連携、経営資源により事業成長を目指す点で共通しますが、資本の移動の有無という点で根本的に異なります。

業務提携と業務連携、業務委託の違い

業務連携は、明確な定義はありませんが、一般的には複数の関係者や組織が目的を同じくして、協力し合い物事を進めることを意味します。 企業同士だけでなく、同じ組織内のコラボレーションを指す場合もあります。業務提携も広義的には業務連携の一種と言えるでしょう。

業務委託とは、ある企業が特定の業務を他の企業に委託することを指します。委託する企業は、自社で行う必要がある業務を外部に委託し、専門知識やリソースを活用します。委託先企業は、委託された業務を受け持ち、委託元企業の要求に応じて業務を遂行します。業務委託は、効率性や専門性の向上、コスト削減などを目的としています。企業間で業務委託契約が交わされ、それに準じて業務が行われます。

業務提携は業務委託の「発注者と受注者」の取引関係にとどまることなく、互いに事業成長のために関係を構築しながら、シナジーの創出を目指す点で異なります。

業務提携を行うメリット

業務提携を行う主なメリットは、以下の通りです。

競争力の強化・市場シェアの拡大

業務提携を行うことで、自社単独で行うよりも確実にピンポイントで必要な分野の強化や補充ができます。 技術やノウハウ、製品やサービスの開発能力、販売網や顧客基盤など、相手の持つ強みを活かすことで、自社の競争力や市場シェアの拡大が可能になります。

リスクの分散

一社だけに依存せず、複数の企業と提携することで、市場変動や競争のリスクを軽減できます。また、新たな市場や地域に進出する際にも、現地の企業と提携することでリスクを分散することができます。

コスト削減

例えば、生産提携により、生産コストを削減したり、物流や調達の効率化を図ったりすることが期待できます。また、販売提携によって販売網を共有することで、販売コストの削減、新市場へのスムーズな進出の可能性が高まります。

新規事業への進出

自社単独で新規事業に進出するには、人材や資金・時間やノウハウなど様々な経営リソースが必要になります。

しかし、対象事業をすでに行っている相手と業務提携することにより、ノウハウはもちろんのこと、提携先が保有する技術や生産能力、販売網やブランド力などを使って、リスクを抑えながら新規事業に打ち出ることができます。

イノベーションの促進

異なる企業が連携することで、新たなアイデアや視点が生まれ、製品やサービスの開発において創造性が高まります。また、技術提携によって相手の技術力を活用することで、新たな技術の開発や市場への導入が可能になります。

以上のように、業務提携は資源や能力の共有、リスクの分散、コスト削減、イノベーションの促進など、企業にさまざまなメリットをもたらします。相手企業との相乗効果を生み出し、競争力を強化するために重要な手段です。

業務提携を行うリスク・注意点

業務提携を行う上で気を付けたい主なリスク・注意点は、以下の通りです。

パートナーシップの選定

業務提携の成功には、シナジーが見込める適切なパートナーの選定が重要になります。自社が提携で実現したい目標や戦略と、相手企業の提供するリソースや能力が一致しているかを慎重に検討する必要があります。利益の不均衡や目的の不一致がある場合、提携の継続や成果の達成に問題が生じる可能性があります。

また、相手企業の経営状態や財務状況、運営能力などを調査し、信頼のおけるパートナーか見極めることも重要です。信頼性の低い企業との提携は、リスクやトラブルの発生を招く可能性があります。

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