山形県で若者や女性の採用を支援 合同会社work life shiftが目指すもの
(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2024年9月12日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
合同会社 work life shift は「若者と女性」をテーマに据え、人と人、組織と人をつなぎながら、山形県内での働き方を豊かにする事業を行っている。
具体的には、企業1社1社に対する採用支援や組織開発、山形県や鶴岡市などの自治体と連携した当該地域の企業への採用支援、高校生・大学生を対象とした出張授業の実施、キャリア支援等を行っている。
近畿経済産業局公式noteマガジン「KEY PERSON PROFILE」、シリーズ「地域と価値とビジネスを巡る探求と深化」第9回は、合同会社work life shiftの代表を務める伊藤麻衣子さんです。東北経済産業局とのコラボ企画です。
取材日(場所):2024年1月(於:山形県鶴岡市)
伊藤さんご自身が鶴岡市に移住してきて感じたことは、若者が感じている閉塞感やこの地域での未来を描けていないこと、女性が自由闊達に意見を言えているとは言い難いことだった。
自分が「よそ者」だからこそ意見を言いやすい状態であることや、大企業や NPO 法人での就業経験を活かすことで、若者や女性にもっとチャンスがある社会、そして、その挑戦が応援される仕組みを作りたいと考えている伊藤さんに、社会的な価値と利益とは何か、という問いを投げかけ、インタビューは始まった。
企業変革のきっかけを作り、地域全体を押し上げることが最大の価値
当初はインターンシップをはじめとした事業活動によって、プログラムに(インターンシップとして)参加した若者や女性が生き生きと過ごし、自分は成長できるという期待を持てるようになることが社会的価値だと考えていた。
しかし、活動を続ける中で、学生インターンを受け入れた企業側がより一層自社に誇りを持てるようになったり、新規事業や採用活動を始めたりするなどの、「企業の変革のきっかけ」になれていることの価値の方が大きいのでは、と思うようになった。
伊藤さんとインターンシップに触れた経営者の方の声
県外に出た庄内出身の学生を地元企業でインターンをする際にアドバイザーとして入ってくださったのが伊藤さんです。「庄内地域での若者不定着に対する危機感」をコーディネーター目線で紐解いていただいた事で、広い視野からみた地域の課題とその先にある未来が繋がりました。大人にも子どもにも気づき・学び多き時間を創出してくれます。
株式会社村上キカイ 代表取締役 村上 哲也さん
新たな挑戦をする企業が庄内地域(山形県北西部)に増えることは、庄内地域に愛着のある人による Uターン就職の可能性向上、さらに、その様子を見た Iターン就職の増加へとつながっていくのではないか。そんな期待感をもって、関係自治体とも連携しながら地域全体を支援し、どこか特別な1社だけが注目されるのではない環境を作っていくことに、今は最も事業の価値を感じている。
企業の変革のきっかけとなる理由としては、インターンシップの若者と関わるイベントへの参加を機に、自社の若手社員の可能性や会社を思う気持ちにはじめて気が付く企業もあるようだ。
その点では、様々な企業の若手が活躍するきっかけという価値も提供できているかもしれない。自治体や企業、人が出会うことで、お互いに学び合ったり、あらためて自分の未来を考えたりできる場を今後も作っていきたい。
同じ地域のいい企業を知ることが、発奮のきっかけになる
最近、山形市内の事業パートナーとともに、山形の「いい仕事」をInstagramで紹介する取り組みを始めた。
企業姿勢に関するいくつかの基準を設け、それに合致する企業だけを規模にかかわらず掲載している。投稿を見たある県内の大手企業は「うちの会社も(ここに掲載されている企業と比較すると)まだまだだな」という感想をもらしたようだ。おかげさまで開始1ヶ月で既に掲載希望の問い合わせもある状態だ。
山形、特に鶴岡市には、誰かが最初の1歩を踏み出せば周囲も積極的になるという特徴を感じている。情報を地域外の人だけでなく、近隣地域の企業にも届けることで、自社を見つめ直す機会を作り、県内で高め合うサイクルを生むことができそうだ。
企業の魅力を客観的に捉え、それを求める人に響く言葉で表現する。その過程にこそ、自社が価値を発揮できる場があるだろう。
事業の継続や発展のためにも金銭的利益は重要
事業を通じて得られる利益には、仕事の対価として得られる金銭的利益の他に、自治体等と仕事をすることで得られる信頼という利益がありそうだ。
また、若者や女性、企業や組織などが変化するきっかけや、誰かが庄内を知るきっかけになれたと感じることも自分にとっては利益だ。
視点を変えると、自分の活動で庄内地域への就職者が増えたら、それは地域にとっての利益が生まれたとも言えるだろう。
個人的には、「仕事の対価として再び仕事が来ること」こそ一番の利益だと感じている。新しく、そしていい展開が生まれる予感のする仕事は、金銭的利益がすぐに得られるものでなくとも取り組んでいきたいと考えている。
しかし、時に企業や自治体の顔となるコーディネーター自身が魅力的な存在であり続けるためにも、また、新たなコーディネート人材の育成のためにも、コーディネーター業務を持続的にする必要がある。それには金銭的利益は重要だ。それは(コーディネーターという抽象度の高い仕事に対して)自分の発揮した価値をはかる指標にもなる。
だが、地方に行けば行くほど、クライアントとなる企業の規模が比較的小さく、採用などにかける予算が少額になる傾向がある。こういった状況では企業や人をつなぐコーディネート業務で金銭的利益を得ることに大きな課題が生じているのも事実だ。
社会的価値が金銭的利益を伴う状態が理想であるし、コーディネーターを目指す若者のためにも、そうできるよう自ら挑戦し続けたい。
コーディネート人材が限られた資源から新たな価値を生み出す
地方は人・時間・お金という資源のすべてが限られている。
だからこそ、あるものを組み合わせて新たな価値を生み出すことが不可欠だ。そんなときに役立つのが、適切にそれらをつなぐコーディネート人材だと考えている。
東北経済産業局など知見をもつ団体には各地に情報共有してほしい。他の自治体の事例を知ることは「自分たちも」というやる気にもつながる。自治体だからこそできる、その地域出身者とのつながり作りもあるだろう。
地域全体を盛り上げていく事業は、中長期的にじっくり取り組むことが必要で、単年度で成果を出すのはなかなか難しいものだ。5年後、10年後を見据え、ぜひ複数年にわたって多様なプレイヤーと協業していきたいと思う。
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- 近畿経済産業局 公式note