反ツーリズム抗議デモで揺れる欧州観光業 不満を抑え経済的不平等を解消する方法は
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年7月30日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
観光客が今年の夏、オープンカフェで飲み物を飲んでいると、自分たちの存在が完全に歓迎されていないのではないかという一抹の不安を感じるかもしれない。今年のシーズンでは、人気のある観光地で住民が追い出され、文化が均一化されてしまうことに対する大規模な観光反対運動が再燃している。
ポルトガル、アテネ、マヨルカ島、テネリフェ島では、観光客に対する抗議活動が行われ、バルセロナでは怒った住民が水鉄砲で観光客に水をかける事態にまで発展した。
観光業への抗議活動は新しいものではなく、その動機も一様ではない。しかし、共通する不満の一つは、観光業によって地元経済が改善されていない一方で、観光客を受け入れる社会的コストが増大していることである。
では、こうした観光業反対の感情は正当化されるのだろうか? 観光業はEU経済活動の約5%を占め、直接的にも間接的にも雇用やビジネスを支えている。観光業がなければ、多くの地域は経済的に貧しくなってしまうだろう。しかし、マヨルカ島の活動家たちは、観光客がビーチのスペースを占有し、公共サービスに負担をかけ、住宅費を住民が手の届かないレベルまで押し上げていると主張している。
観光業の経済的な利点と欠点を考えると、反対派の意見には一理ある。しかし、彼らは大局を見失っている。
2023年には推定13億件の海外旅行が行われ、観光客は旅行に1.5兆米ドル(1.2兆ポンド)以上を費やした。これはスペインの経済規模にほぼ匹敵する。もし観光業が一つの国だとしたら、G20の一員となるだろう。
さらに、海外旅行者は自国で稼いだお金を他国で使うため、海外旅行は輸出と見なされる。例えば、2022年には海外旅行客がEU27カ国で約3,700億ユーロ(3,120億ポンド)を消費した。この輸出収入は、輸入コストのバランスを保ち、地元では手に入らない食料や燃料などの支払いに使える。
それにもかかわらず、こうした経済的寄与が高すぎるコストを伴うという懸念もある。今年1月、フィレンツェのアカデミア美術館の当時の館長は、観光客に魂を売り渡したと市を批判した。
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