370万本もの放棄油井・ガス井問題 米国が今後立ち向かう230億ドル規模の封鎖事業
カーティス・シャック氏は、米国中に放置された油井が存在することを知り、それを封鎖することを自身の使命とした。(※本記事は米NYに拠点を置く非営利組織が運営するウェブマガジン、Reasons To Be Cheerfulから許可をいただき翻訳・転載しています。)
2019年、モンタナ州北部の農村地域でカーティス・シャック氏が農家と共に小麦畑を視察していた際、腐った卵のような悪臭を放つ、錆びた金属に囲まれた掘削孔を発見した。この出会いが彼の人生を変え、最終的に米国の炭素排出量削減の方向性をも変えることになった。彼はメタンを含む汚染物質を大気中や周囲の農地にまき散らしている、放棄された油井に出くわしたのだった。自分が発見したものが何なのかを理解した彼は、湾岸戦争で原油価格が暴落した1990年代に残された油井が、そこらじゅうに点在していることを突き止めた。
「自分が見たものが信じられなかった」と、テキサス訛りの強いシャック氏は語る。「運悪く偶然そこに居合わせたのか、それとも運命的な良い出会いだったのか、見方次第だがね」
元石油・ガス業界の重役だった彼はこの汚染状況を見て強い衝撃を受け、即座に行動を起こすべく決意した。その計画は、できる限り多くの油井を封鎖することだった。その日のうちに、彼は「Well Done」という非営利団体の名前を考え出し、トラックの中から「TheWellDoneFoundation.org」のドメイン名を登録した。
この一人の強力なリーダーによるひらめきから始まった取り組みは、現在では14州で45本の油井の封鎖に繋がっている。「ちょうどオハイオ州アクロンで45本目の油井を封鎖したところだ」と、シャック氏はオレゴン州ポートランドの空港出発ロビーから電話で話す。「結果、CO2換算で100万トン以上の温室効果ガスを削減できたことになる。これが私たちの活動の素晴らしいところだ。効果は即時に現れる。」
これは一人の男が大きな違いを生み出した話であり、同時に石油・ガスのブームが米国全土に残した有害な遺産の物語でもある。カーティス・シャック氏は、一本ずつ油井を封鎖しながら気候変動の抑制に貢献している。
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