「買う」から「借りる」への行動変容を 米国の図書館で衣服貸出しの実証実験
昨冬、米ニューハンプシャー州にあるドーバー公立図書館は6週間にわたり、ファストファッションの代替として衣服を貸し出すサービスを提供した。
(※本記事は気候変動やよりよい未来に役立つ情報を掲載する非営利メディア『Grist』に2024年6月26日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
注目の取り組み、「衣服図書館」
今年初め、ニューハンプシャー州ドーバー市の図書館では、通常貸し出している本やCDの棚に加えて、衣服のラックが登場した。12月から1月中旬までの毎週日曜・月曜に、ドーバー公立図書館の講堂で新しいタイプの貸し出しサービス、「衣服図書館」の実証が行われたのだ。来館者は、1人5点までを2週間レンタルできた。レンタルできる衣類は冠婚葬祭など「特別な場で着る服」を中心に集められており、パーティーのドレスや結婚式の衣装、スキー旅行用の防寒具など、一度だけ着ることが多い服が対象だった。
しかし衣服図書館の創設者であるステラ・マルティネス・マクシェラ氏は、このプロジェクトの真の目的はこれら衣類の購入と廃棄を避けることよりも、行動変容を促すことだと語る。「新しいものや中古品を購入するという行動から、借りるという行動へのギャップに、どう橋を架けられるか?という話です。」
バルセロナ自治大学が運営する世界初の脱成長(Degrowth)に関する修士課程についての記事を取材している際に、マクシェラ氏に出会った。彼女はそのオンライン課程の最近の卒業生で、衣服図書館は彼女の修士論文プロジェクトだった。本記事では、哲学的な新しい経済システムのアイデアが現実の経済システムにどう影響するかを探りたい。マクシェラ氏のプロジェクトはその一例である。
マクシェラ氏はファッション業界でキャリアをスタートさせた。2000年には米国初のファッションインキュベーターを立ち上げた。しかし、彼女がファッションの本質を愛する一方で、業界が人権侵害や環境汚染、廃棄物の問題を引き起こしていることも知っていた。彼女は長い間、循環型ファッションに興味を持っていたが、ファストファッションに関連する問題の根本を解決するには不十分だと感じていた。「脱成長」という概念とその修士課程を見つけたとき、「ファストファッション×資源採取」を「レンタル×既存資源の有効活用(=リユース)」に置き換える、という彼女のアイデアを証明する場として理想的だった。
マクシェラ氏は、地元の古着店やビンテージショップから余剰の衣類を集めることで衣服図書館のパイロット版を構築し始めた。一般的に、古着は在庫の約20%しか販売されないと推定されている。ビンテージショップや委託販売店(※売り手から商品を預かり、売れた場合に売上を還元する取引形態を主とする店舗)でも、一定期間内に販売できなかった衣服を処分することがある。「彼らは商品を循環させないとダメだ」と彼女は言う。「たとえば、すごく可愛いものでも、古着店にしては価格が高すぎたとか、季節外れのセーターだから2週間では売れなかった、とかいう理由があったかもしれませんよね。」
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