高高度通信基地局(HAPS)が拓く30億人規模の通信市場 被災地や農業にも利点
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年8月26日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
世界人口の約3分の1、つまり約30億人がインフラの制約や経済的な格差、地理的な孤立などの理由でインターネットにアクセスできないか接続が不十分である。
現在の衛星や地上のネットワークでは、地理的条件のために従来の地上通信設備の設置があまりにも高コストとなる場所で、通信が届かないエリアが発生している。
そこで無人の気球や飛行船、グライダー、飛行機などに搭載された高高度通信基地局(HAPS)は、地上や衛星のカバーエリアを補完してインターネット接続の格差を埋めることで、社会的・経済的平等を促進する可能性がある。そのため、より多くの人々がデジタル時代に参加できるようになるだろう。
この記事の著者の一人である電気工学者のモハメド・スリム・アロウィニ氏は、成層圏から速いデータ通信速度と広範囲な5Gの通信エリアを提供できることを実証する実験を行った。成層圏は大気の中で地上に2番目に近い層であり、地球の表面から4~30マイル(約6~48キロメートル)までの範囲に広がっている。民間の飛行機は通常、この成層圏の下部を飛行する。この実験では、通信基地局と地上のユーザーとの間で信号を測定した。測定は、ある場所にとどまっている人、車を運転している人、そして船を操縦している人という3つのパターンで行われた。
実験の参加者たちは、信号の強さと干渉やノイズのレベルとの関係を測定した。これはネットワークの安定性の一つの指標である。結果は、通信基地局が4K解像度のビデオストリーミングのような高速通信ができるうえ、地上のタワーの15~20倍のエリアをカバーできることを示した。
2010年代に行われたFacebookやGoogleによる初期の通信基地局の商業展開の試みは成功しなかったが、最近の投資や技術の進歩、従来の航空企業や専門的な航空宇宙系の新興企業からの関心が状況を変えるかもしれない。
目標は世界的な接続の確保であり、この通信基地局のアイデアは世界経済フォーラムの2024年の「トップ10の新興技術」にも選ばれている。学術機関も参加する「HAPSアライアンス」という国際的な業界団体も、この目標に向けて取り組んでいる。
HAPSは高速通信可能で敷設のコスパが良く、柔軟性も高い
通信基地局は衛星ベースのシステムに比べて高速で、費用対効果が良く、柔軟性もある。
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