映画館大手のドリッププライシングに罰金 ESG対策不足が実害になる事例が増加
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年9月30日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
カナダの映画館チェーン大手Cineplex Inc.(シネプレックス)は、誤解を招くマーケティング手法により3890万ドル(約5800万円)という過去最高額の罰金を科され、今日のビジネス環境におけるESG関連の問題への対応を怠った場合に発生しうる財務的なリスクを浮き彫りにしている。
ESG関連の問題には、自然資源、人材・知的資本、財務・物的資本、そして関係資本といった複数の資本を管理することが含まれる。
つまり、ESGへの取り組みには、短期的な経済的利益だけに注目するのではなく、企業の取り組みをより統合的かつ包括的に捉えることが求められる。
ESGの取り組みを左右する主要な課題としては、企業の顧客や地域社会との関わり方、事業活動の環境への影響の管理、業界内での競争力、法令遵守の程度などが挙げられる。
シネプレックスの事例では、カナダの競争審判所は同社が「ドリッププライシング」と呼ばれる手法に関与していたと指摘している。これは、映画やコンサート、航空機のチケット購入などで見られる手法で、商品自体の価格に加えて「システム手数料」や「サービス利用料」などの追加料金を購入直前に課すことで、実際に掛かる価格よりも安いと誤解する状況を作り出す手法である。競争局によると、この事例は、シネプレックスが2022年6月から2023年12月にかけて多くの顧客に対して課していた必須の1.5ドル(約220円)のオンライン予約手数料に関連しているという。
シネプレックスはこの主張を否定しており、決定を不服として異議申し立てをする意向を表明している。また、依然としてオンライン手数料を顧客に課しているが、現在はより明確に表示している。
ESGの問題は他業種でも罰金が科されるように
シネプレックスへの罰金は、今年課された他の多額の罰金に続くものである。今年1月、Cummins Inc.(カミンズ、米国のエンジンメーカー)は環境違反により16億7500万ドル(約2500億円)の罰金を科された。カミンズは、自社の車両に過剰な排出を許容する装置を取り付け、米国の「クリーンエア法」に違反していた。また、3月には反競争的行為によりEUからアップルが20億ドル(約3000億円)近い罰金を科されている。
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