訪日客の購入品や忘れ物を世界へ配送 TUMOCA Expressが手ぶら観光サービス展開

(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2026年3月9日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

TUMOCA Express

訪日客(非居住者)の旅行手荷物や購入品、そして“忘れ物”まで母国へ届ける国際配送「TUMOCA Express(ツモカ エクスプレス)」を展開する株式会社オー・エス・エス(大阪市西区)。旅の荷物を世界中へ届けることを掲げ、旅行者の手荷物サポートやホテルの忘れ物国際配送を提供しています。

今回は同社の取組について、荒本代表取締役にお話をお伺いしました。

沖縄のアウトレットから始まった、“できない”を“できる”に変えるサービス

同社は元々、百貨店で購入された商品の個別宅配を得意としており、国際配送にも引き合いがありました。そんな中、2014年に沖縄のアシビナ(現・沖縄アウトレットモールあしびなー)から「海外へ買い物荷物を送りたい」という相談が持ち込まれました。国や品目ごとに異なる禁制品の確認、英語のインボイス作成、HSコードの判断、通関・輸出申告――個人荷物の国際配送は、煩雑な手続きとリスク管理の積み重ねです。そのため、“訪日客の国際配送”を引き受ける事業者はほとんどありませんでした。

そこで同社は荷物の持ち主の代理人として、見積から決済、通関、配送、発送後のトラブル対応までを一気通貫で引き受けるサービスをわずか数ヶ月で開発。こうして誕生したのが、インバウンド特化型の国際配送サービス「TUMOCA Express(ツモカ エクスプレス)」です。従来の国際配送では不可能だった“日本に住所のない個人の購入品をその場で海外へ送る”というサービスは大きな反響を呼び、商業施設や免税店、宿泊施設などへ一気に広がりました。

アシビナ
アウトレット・周辺宿泊施設での導入
アウトレット・周辺宿泊施設での導入

ホテルの「忘れ物」まで届ける、新たなニーズとの出会い

サービスが広まる一方で、意外なニーズが芽吹きます―「ホテルの忘れ物を海外まで送ってほしい」。宿泊施設にとって忘れ物の国際配送は、想像以上に高いハードルが立ちはだかる領域です。

国際配送では本人確認や内容確認、国際決済、各国ルールへの対応が必要で、国内のように着払いが使えません。宿泊施設はゲストに海外から配送料金を送金してもらう必要がありますが、手続きの煩雑さや高い送金手数料が理由で支払いを断念されることが多く、送られても銀行手数料でほとんど残らない場合もあります。さらに、荷物受取後に連絡が途絶え、代金が支払われないケースもあり、負担は非常に大きいのが実情です。インバウンド客の急増、人手不足により業務負担が増える中、「送ってあげたいけど、送れない。」現場の声に背中を押され、同社は「忘れ物の国際配送」という新領域も切り拓いていきました。

実は、訪日観光の現場では「忘れ物」や「国際配送」といった業務は長年、明確な担い手が存在しない領域でした。本来は宿泊施設や商業施設の業務ではないものの、ゲスト対応の一環として現場が対応せざるを得ないケースが多く、大きな負担となっていました。TUMOCA Expressは、こうした“観光現場の空白業務”を担う仕組みとしても機能しています。

ホテル忘れ物国際配送サービスのスキーム
ホテル忘れ物国際配送サービスのスキーム

施設負担ゼロを実現した国際配送のしくみ

荷物だけでなく忘れ物の国際配送まで実現したTUMOCA Expressは、現在では全国のホテル、商業施設、空港、交通事業者、さらには警察署にまで導入が広がっています。最大の特徴は、施設側に一切の費用負担が発生しないことです。依頼はWebで完結し、見積りから決済までは同社が対応。決済確認後、施設は同社へ着払いで発送するだけという流れを構築しています。そのため、施設は海外ゲストにサービスを案内し、あとは「確認して送る」作業に専念でき、業務負担を大幅に軽減することができます。

コロナ禍以降、導入施設は配送手配後に届くゲストからの「Thank youメール」を“CRM(顧客接点)ツール”として活用し、口コミやリピート客の獲得に繋げています。海外OTA依存から自社ブランド確立への役割も果たしており、「現場スタッフのモチベーションアップにも繋がる。」といった声も寄せられています。

実現した“究極の手ぶら観光”/手荷物国際配送へのアップデート

「ホテルのチェックアウト時にスーツケースを自国へ直送できる」「購入した商品を、帰国後にちょうど届くよう発送日を指定できる」――同社のサービスは、外国人観光客に“究極の手ぶら観光”を提供する仕組みとしても機能しています。

商業施設や宿泊施設に設置されている専用QRコードを利用者自身のスマホで読み取り、申し込みから決済まで全てを完結。このサービスも導入施設に費用負担はなく、PCやプリンター設置も必要ありません。重い荷物を持ち歩く負担がなくなることで、旅行者はより身軽に観光地を回遊でき、消費行動も活発になります。

ホテルの部屋に設置されたサービス案内
ホテルの部屋に設置されたサービス案内
ホテルの部屋に設置されたサービス案内

関西では、関西国際空港の玄関口に位置するりんくうプレミアム・アウトレット内において、2023年4月に国際配送受付および手荷物預かりカウンターを設置。買い物の心理的ハードルを下げ、訪日客の最後の買い物を後押ししています。

現在ではTUMOCA Expressを活用した“店舗からの直送”を推進し、2026年11月インバウンド免税制度変更による「リファンド方式」を見据えた「輸出免税制度」をいち早く取り入れ、“最高のショッピング体験の拡張”と“空港混雑などのオーバーツーリズム課題改善”に取り組んでいます。

心斎橋PARCO内、1階インフォメーションカウンターにおいてもTUMOCA Express活用による海外発送を行っています。場所を作ることで専門店スタッフは販売に集中することができ“多様な個性と価値観をつなぐ”役割の一部を担っています。

手荷物預かり・国際配送カウンターの様子
手荷物預かり・国際配送カウンターの様子
心斎橋PARCOでの導入
心斎橋PARCOでの導入

TUMOCA Expressが目指すこれからの展望

今後同社が目指すのは、ホテル・観光協会・商業施設・体験工房・専門店まで、“日本全国の地域”へサービスを展開していくことです。フィギュア、スポーツ・アウトドア用品、オーダースーツ、度付きメガネ、さらには焼き上がりに時間がかかる陶芸や絵付け体験など――これまでは「その場で持ち帰れない」ために断念されていた商品・体験を、“あとから届く”という新しい選択肢を加えることで、購入機会を逃さず、施設側・利用する外国人双方の満足度向上、地域活性化を実現します。

TUMOCA Expressが生み出すのは、ただ荷物を届ける仕組みではなく、旅行者の体験をより自由で快適なものへ変えていく日本独自の新しい体験価値です。訪日旅行がますます拡大していく中で、同社の取り組みは“観光DXと物流の融合による観光消費インフラ”として今後の観光のあり方を大きく変えていく可能性を秘めています。

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近畿経済産業局 公式note