住民・職員のための自治体DX デジタルの力で市民サービスを向上

住民や職員のためのデジタルトランスフォーメーション(DX)をどう進めていくかが課題となっている。DXで利便性の高い市民サービスを目指す三重県津市長の前葉泰幸氏と、ZVC JAPAN社長の佐賀文宣氏が、DXによる市民サービス向上と、デジタルの力を使った自治体運営について話し合った。

津市ではDX成功事例を組織内で共有している

基幹情報システム更新時に
標準パッケージを採用

2022年春に基幹情報システムが更新時期を迎えた津市では、カスタマイズは極力行わず、標準パッケージを使用することとした。さらなる業務効率化を図るため、光学的文字認識(OCR)に人工知能(AI)技術を加えたAI-OCRや、ロボットによる業務自動化(RPA)の活用を促進している。

「例えば、国民健康保険の簡易申請書のデータをシステムに取り込む作業が年間2000件程あり、これをRPAに代替させています。また、子育て関連の施設利用に関わる書類もAI-OCRやRPAで自動的に処理できるように進めています」。

津市長の前葉氏は、こう語る。他にもDXで市民の利便性を高めていくため、様々な取り組みを進めている。市役所の窓口では、混雑状況や証明書交付の呼出状況をインターネットでも確認できるようにした。さらに証明書などを申請してから窓口を離れた市民には、メールで準備が完了したことを知らせるシステムも導入した。

前葉 泰幸 津市長

また、市のプレミアム付商品券は2022年度は、QRコードを店頭に置くだけで店舗が参加できるデジタル地域通貨方式に変更、「つデジ」という名称で発行している。「デジタル商品券については、スマートフォンを使えない高齢者が購入できず、不公平だという声もあります。しかし、高齢の方々の多くが、『スマートフォンを持てば、デジタル商品券が買える』と考え、ポジティブに受け止めてくださっているようです」(前葉氏)。

他にも、高齢者外出支援事業で津市独自の交通系ICカード「シルバーエミカ」を発行する際には、国の「マイキープラットフォーム」をポイントの付与・管理に活用している。前葉氏は、「2016年に、マイナンバーカード普及に向けて総務省が行っていた実証実験に参加したのがきっかけです。マイナンバーカードの民間利用が可能な電子証明書(マイキー)を使えば、色々なところで活用ができます」と手ごたえを語った。

オンライン会議のZoom
市民サービスや現場作業でも活用へ

一方、コロナ禍で広く利用されるようになったウェブ会議サービス「Zoom」を提供するZVC JAPANは、自治体DXのサポートにも力を入れている。

「Zoomでは、毎日の延べミーティング参加者数が300万人に達しています。現在は主にオフィスワーカーの方々に利用されていますが、今後は裾野を広げ、屋外の現場で働く方や、企業が消費者に提供するサービス、自治体の市民サービスにも活用していただきたいです。Zoomのビデオ・テクノロジーを使えば、遠隔でも温かみや肌感のあるコミュニケーションが可能になります」と、ZVC JAPAN社長の佐賀氏は言う。

佐賀 文宣 ZVC JAPAN社長

ビデオ・コミュニケーションは進化し続けており、その活用の可能性はますます拡がっている。例えば、Zoomの翻訳や字幕の機能を使えば、日本語ができない外国人住民に対するサービスも可能になる。Zoomでは今年春から、これらをAIで自動的に行う機能を提供している。相手が外国語で話した内容は字幕化され、AIによる翻訳で日本語訳も表示する。英語以外にも中国語やフランス語、ウクライナ語など、多様な言語に対応している。

「自治体においては、外国人の生活支援を提供する際にご利用いただいている事例もあります。また、ビデオ・コミュニケーションだけでなく、クラウド電話の機能も使えば、職員の方が自宅にいても職場の電話番号にかかる電話に応答できるようになります。もしくは、職員の方が庁内にいない時でも、庁内の電話番号を使って市民に電話をかけられるサービスもあります」(佐賀氏)。

ZVC JAPANでは現在、全国各地の自治体と連携協定を結び、実証実験などを通じて自治体DXを支援している。屋外の現場作業員がカメラ付きのスマートグラスをかけて撮影した映像を、Zoomを使ってリアルタイムで送信できるようになれば、遠隔地にいる専門家のアドバイスを受けながら作業することもできる。さまざまな地域で、このようなシステムを設備点検や農業支援など様々な分野に活用していくための実証実験を進めている。

佐賀氏は「今後は自治体が取り組む様々なサービスにZoomを取り込んでいただき、自治体の課題解決をサポートしていきたいです。また、ビデオ・コミュニケーションのテクノロジーが『Zoomを使っている』と意識することなく、自然に使われるような形で行政のサービスに溶け込んでいきたいです」という。

DX推進には成功事例の共有がカギ
小さなプラスを積み重ねる

津市では2022年5月、本庁舎と15拠点を結ぶZoomのWeb会議で「第1回津市自治体DX推進会議」を開催した。「今後は横断的な組織づくりをして、皆で自治体DXを考えていかなければいけません。基礎自治体はすべての行政サービスに関わっており、それらへのデジタル活用や地域のDXも考えていく必要があります。会議では、そういったところまで踏み込んでいきたいです」と前葉氏は期待を話した。

津市における今後のDX推進では、「成功事例を皆で共有していくことが最も重要」と前葉氏は言う。例えば、子育てに関わる部局でAI-OCRの活用が成功し、その事例を他の部局にも伝えられれば、他の部局でも「AI-OCRを活用したい」という流れになるはずだ。このため、自治体DX推進会議では成功事例の共有を促進し、職員一人ひとりが常に、デジタルの活用を考えられるようにしていく方針だ。

「現在、自治体が直面する大きな課題にはDXと脱炭素がありますが、いずれも目指すべき方向ははっきりしています。1つ1つの取り組みは小さなものでも、それらを積み重ねていけば進むべき方向に向かえるはずです。自治体職員の皆さんには、あまり難しく考え過ぎず、良いと思った方向でどんどん行動を起こしていただきたいです」(前葉氏)。

 

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