周産期の遠隔医療に取り組むメロディ 世界共通の課題に挑む

胎児をモニタリングするデバイスを使って、遠隔での妊婦ケア実現を目指すメロディ・インターナショナル。製品開発の際は、国内だけでなく海外でも実証実験を実施し、スピーディな実用化につなげた。

メロディ・インターナショナルは、「分娩監視装置iCTG」を開発・販売している企業だ。この装置は、妊婦のお腹の張りと胎児の心拍数を測ることができる計測器。これにより、従来は病院にある大きな機器でしか行えなかった妊婦・胎児の状況の計測が、遠隔で実施できるようになった。

同社はまた、妊婦とその家族や医療機関、行政などをつなぐ周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」を構築した。iCTGで計測したデータは、タブレット端末を通じて病院の担当医に送信されるようになっている。

分娩監視装置iCTG(手前)とデータを医師・妊婦・家族などで共有するクラウドプラットフォームMelody i

メロディ・インターナショナルCEOの尾形優子氏は、「妊娠・出産はリスクの大きい営みですが、日本では産科医不足が深刻化しており、発展途上国では医療そのものへのアクセスが困難であるという課題があります。医療過疎地での遠隔妊婦モニタリングを可能にする装置を開発・販売しています」と事業を紹介した。

国境を超えて共通する課題に
日本企業から解決策を提示

メロディ・インターナショナルは香川大学発ベンチャーとして認定を受けており、iCTGは香川大学と共同で開発した製品だ。日本での発売は2019年1月だが、これに先駆けて、JICA草の根技術協力事業(地域活性化特別枠)により2017年からの3年間、実証実験を行っている。タイの古都チェンマイにある31の公立医療機関がiCTGを導入している。

「チェンマイ県の面積は四国と同程度。広大な県域の中で、公立病院における妊婦のケアが地域の隅々まで行き届かないという課題がありました。香川大学とチェンマイ大学が姉妹校である縁で、その課題に対するソリューションとして実証実験を実施。地域の周産期医療を支援するとともに、自社製品の現場での知見を蓄積することができました」と尾形氏は振り返る。さらに、経済産業省による新興国への日本企業の進出支援補助金「飛び出せJapan!」プログラムを利用して、南アフリカでも実証試験を実施した。

これらの実証をもとに改良を繰り返し、性能を向上させた結果、2018年5月に日本において厚生労働省から管理医療機器(クラスII)の製造認証を得られた。また医療保険も適用されており、現在、国内では110施設で226台が使用に供されている。海外では、タイ、ミャンマーなど途上国を中心とする11カ国で131台が稼働中だ。

国内の地域が抱える課題と、途上国の問題は全く縁がないように考えがちだ。しかし、同社の事例は、社会が満たすべきニーズの多くは共通していることを示している。

「多くの島を抱える香川県は、国から遠隔医療の特区かがわ医療福祉総合特区に認定されています。そこで県や大学と協力して開発を進めつつ海外展開に着手し製品開発をスピーディに進めることができました。自社ビジネスを通じて、世界中で周産期医療レベルの向上に貢献していきます」と尾形氏は話した。

 

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