実務教育学としてのリカレント教育―理論と実践の不断の往還

リカレント教育の位置づけ

これまでの議論を通じて、リカレント教育は単なる職業能力の再開発ではなく、自己実現や実践知の再編成として捉え直されるべきことを確認してきた。しかし、ここでさらに問うべきは、それをいかなる学問的枠組みで理解するかである。すなわち、リカレント教育を「教育政策」や「人材開発」の一領域としてではなく、より根源的な学びの理論として位置づける必要がある。

この点において、「実務教育学」という視座は重要な示唆を与える。実務教育学とは、社会の諸実践の中で形成される知を理論的に捉え、その生成・共有・変容のプロセスを明らかにし、再び実践へと還流させる学問である。

実践知の生成過程への参加

また、リカレント教育は、既存の知識を補充する場ではなく、実践の中で形成された知を再構成する場である。学習者は一定の職業経験を有し、その経験には多様な実践知が含まれている。問題は、それが十分に言語化されず、個人の内側にとどまっている点にある。

実務教育学の観点から見ると、リカレント教育の核心は、この実践知を可視化し、共有可能な知へと転換するプロセスにある。たとえば、ある実務者が現場で行っている判断や工夫を言語化し、それを他者と共有することで、個別の経験は社会的な知へと変わる。この過程を通じて、実践知は再編成され、新たな実践へとつながっていく。リカレント教育は「知の生成過程への再参加」として理解できる。

理論と実践の往還

実務教育学のもう一つの特徴は、理論と実践の往還を重視する点にある。実践から理論を抽出し、その理論を再び実践に適用する。この循環構造は、リカレント教育においても中核をなす。

実務者が自らの経験から一定の原理や構造を見出す理論化のプロセスと、その理論をもとに新たな実践を試みる再実践のプロセス。この往還によって個人の実践は深化すると同時に共有可能な知として蓄積されていく。

従来の教育では、理論はあらかじめ与えられるものとされてきたが、実務教育学においては、理論は実践の中から生成される。そこでは、学習者は単なる受け手ではなく理論の生成に関与する主体として位置づけられる。

実務教育の制度化

このように考えると、リカレント教育の設計もまた見直される必要がある。単に講義を提供するだけでなく、経験の共有、対話、共同探究といったプロセスを組み込んだ学習環境である。

ここで、専門職大学院や実務家教育の場が持つ意義は大きい。異なる分野の実務者が集まり、それぞれの経験を持ち寄りながら議論することで、個別の実践は一般化され、理論的な枠組みへと昇華される。さらに、それを各自の現場に持ち帰ることで、新たな実践が生まれる。

社会教育の場にも同じことがいえる。公民館や地域学習の場において、実務者が自らの経験を他者と共有することは、知の社会化の第一歩となる。

知の循環としてのリカレント教育

リカレント教育の根幹をなす「知の循環構造」において重要なのは、この循環が個人の内部に閉じるのではなく、社会的に共有されることである。知が知を生み出し続ける過程そのものが成果であり、その蓄積が社会全体の知的基盤を形成する。

リカレント教育を実務教育学の枠組みで捉えることによって、その意義は大きく拡張される。学びは、実践知の生成と共有、そして理論化と再実践の循環として理解される。

それはまた、社会教育とも深く連動する。地域や職場での実践が学びの素材となり、その学びが再び社会へと還元されるとき、知の循環は具体的な形をとる。実務教育学としてのリカレント教育は、単なる制度や政策を超え、人が実践を通じて知を生み出し続ける社会の構想に関わっている。その構想をどのように具体化していくかが、今後の重要な課題である。