神姫バス 前向きなチャレンジ意欲を掻き立てる制度へ刷新

兵庫県を中心に路線バスなどを運行する神姫バス。コロナ禍で業績が落ち込む中、従来の新規事業提案制度を社内ベンチャー制度へ刷新。社員の挑戦心を呼び起こし、社内の雰囲気を盛り上げる。

左/井村在宏 神姫バス 取締役人事部長
右/濱田 環 神姫バス 事業戦略部長

提案者の実行責任を重視

2021年3月1日からスタートした社内ベンチャー制度。神姫バスにはもともと、20年来続いた社内新規事業提案制度が存在したが、今年から名称を改めると同時に、提案者の実行責任を重視する形に制度を刷新した。

人事部長の井村在宏氏は「これまでは提案するだけでもよかった制度を、実行責任も伴う形にしました。提案者に権限を与えることで、確実に実行させていく仕組みに見直しました」と話す。

制度刷新の背景には、昨年来のコロナ禍による業績の落ち込みがある。社員が下を向かないよう、前向きなチャレンジ意欲を掻き立てる。特に『若い世代に絶望感や諦めが蔓延しないように』という考え方があるという。

『誠実に、果敢に、おもしろく』を行動指針に掲げる同社。〈課題解決力〉は長年、社員に求めてきたスキルで、20年続いた社内新規事業提案制度では、農業事業や保育事業など、今も続く事業を生み出してきた。

今回の刷新は、提案者の意気込みと提案の質の向上が狙い。制度を運営する事業戦略部長の濱田氏は「挑戦していくこと、失敗を恐れないこと、まちづくり、地域づくりといったキーワードがある中で、課題を自分で発見し、それを事業と結びつけ解決していく人材が必要です。そうした自律型の人材を育てていくことが制度の狙いのひとつです」と話す。

人事制度とも連携し、制度を推進

社内ベンチャー制度をスタートして1年目となる今年、すでに3件のエントリーが出てきている。提案者はいずれも乗務職で、コロナ禍でバス事業が苦戦する中、危機感を持って新しい事業に挑む姿勢がうかがえる。

応募に際して、事業アイデアの既存事業への関連づけにはこだわらない。採択されればプロジェクト期間に入り、提案者は関連部署に異動・出向し、管理職の権限を与えられて企画を推進していく。

事業計画作成や役員へのプレゼンテーションに向けては、事業戦略部がサポート。計画がある程度固まれば外部からのメンターを入れ、まとめていく。

「事業化がかなった際には、神姫バス本体の直営事業とするか、子会社化するか、既存のグループ会社の事業に統合するか。内容により柔軟な形で対応することを考えています」(濱田氏)

神姫バスでは社内ベンチャー制度と並行し、人事制度として目標管理制度を10月からスタートしている。

「目標設定と達成への責任を明確にしていくという点で、社内ベンチャー制度と合わせ、社員の前向きな挑戦を後押ししていく仕組みとしていきたい」と人事部長の井村氏は今後の方向性を語った。

社内ベンチャー制度の事務局担当だった20代の女性社員は今年、自身が提案制度に応募しブラッシュアップしていたアイデアで、経済産業省の出向起業制度へ応募。採択され、オンデマンドに移動できる空間としてのバスを提案する『株式会社リバース』を立ち上げ、今年6月に出向起業の形で独立した。社内ベンチャー制度の副産物といえる成果だ。

 

神姫バス社員が立ち上げた『リバース』の概要

 

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