ネクスコ東日本エリアトラクト ノンアル飲料を独自開発
高速道路のサービスエリアやパーキングエリアにある商業施設の管理・運営を担うネクスコ東日本エリアトラクト。地域性を生かした企画で施設の魅力向上に力を注ぐ同社の新商品『NAGOMINO ZERO -和みのゼロ-』を開発したネクスコ東日本エリアトラクト東北支店の横山夕紀氏に話を聞いた。

横山夕紀 株式会社ネクスコ東日本エリアトラクト東北支店(仙台校11期生/2023年度修了)
人口減少社会に備えて
SA/PAの魅力向上が課題
新潟県および長野県の一部を含む関東以北から北海道までを事業領域とする東日本高速道路(NEXCO東日本)グループの中で、高速道路のサービスエリア・パーキングエリア(SA・PA)における商業施設の管理・運営を担っているネクスコ東日本エリアトラクト。2024年6月にSA・PAのサービス機能の拡充等を図るためにグループ統括機能を付加し、社名をネクセリア東日本から現社名に改めた。
2012年入社の横山夕紀氏は大学3年生のときに東日本大震災で被災。あらゆるインフラが寸断されて混乱する中、いち早く復旧した高速道路は人々の生活再建や復興に大きく貢献。横山氏は「ボランティア活動を通して知り合った自衛隊員の方から『最後に温かい食事をとったのが安達太良SAだった』とのエピソードに感銘を受け、SA・PAに携わる仕事がしたい」と考えて入社を決めた。
その後、東京での勤務やNEXCO東日本東北支社への出向などを経験。昨年からネクスコ東日本エリアトラクト東北支店勤務となり、エリア内のSA・PAのテナント管理や新規事業開発に携わっている。昨今は日本全国のSA・PAが特色を打ち出し、旅の通過点ではなく目的地として注目されることも多いが、すべてにあてはまるわけではないという。
「特に東北エリアではSA・PAの老朽化が進んでいます。そもそも高速道路自体が開通から50年を超えていますから、あちこちで修繕が必要。その際の優先順位はどうしても収益性が高いところが先になるため、古い施設ではソフト面でいかに盛り上げていくかが課題となっています。東北は人口減少による通行量の減少が懸念されていますので、どうしたら首都圏やインバウンドの方々を呼び込むことができるのか、販売促進と共に情報発信にも力を入れています」
好きなことを発想の起点に
オリジナル飲料開発を構想
NEXCO東日本に出向していた2022年、横山氏は会社の推薦を受けて事業構想大学院大学に入学する。会社から指示や命令があったわけではないが、派遣された以上は会社に貢献したいとの思いからSA・PAのゴミ箱活用や道の駅との連携を構想したり、自身にとって身近な子育てや教育の事業を考えてみたりしたが、どれも決め手に欠けた。そんな2年次の夏、「もういっそ自分の好きなことで構想しよう!」と思えたことが転機となる。
「大好きな飲み会に参加しても翌日にお酒が残ることが増えたので、ノンアルコール飲料が目に付くようになりました。いろいろなノンアルコールを試しましたが、おいしいと感じられるものが見つかりませんでした。また、酒税法上はアルコール1%未満ならば酒類に含まれませんが、ノンアルコールやアルコールフリーと表記していながら実際には0.03%程度のアルコールが入っている商品も多いことが、高速道路に携わる仕事をしている立場として気になっていました。それで、アルコールがまったく含まれない、おいしいビールテイスト飲料を自分で作ろうと考えたのです」

アルコールフリー飲料「NAGOMINO ZERO -和みのゼロ-」
これまでに飲料の開発に携わったことはなく、まさにゼロからのスタートだったが、「谷野豊教授や同期のアドバイスは本当に役立ちましたし、フィールドリサーチ先としてビール工場を紹介してくれた同期もいて、みんなで作り上げた感覚でした」。さらに、横山氏は単なる商品開発にとどまらず、SA・PAに飲料を製造する「ブルワリー」を開設することでSA・PAの活性化につなげようと考えた。「髙谷将宏特任教授には社会に実装する際の留意点やアイデアを論文にまとめ上げる上でのご指導をいただいて感謝しています」と当時を振り返る。
構想計画からさらに進化
2種類の商品がSA・PAデビュー
横山氏は事業構想計画書「SA・PA“ブルワージュ”構想~アルコールフリー飲料によるアルコールに関する全てのストレス解消を目指して~」をもって修了し、会社に事業化を提案した。もともと会社には定期的な報告を入れており、計画に対する周囲の反応も悪くなかったが、実際に事業化するとなると話は違う。社内には新規事業の立ち上げノウハウがなく、何をするにも苦労の連続だった。また、アルコールが全く含まれないとは言え、アルコール代替飲料を取り扱うことの是非を問う声も少なからずあった。
「炭酸飲料だから良いという意見もあれば、お酒を想起させるものを当社が手掛ける必要はないとの意見もありましたが、私の構想の起点はお酒を飲む人も飲まない人も幸せになってほしいとの思いです。車の運転や健康上の理由でお酒を飲めない人は多いのに、食事と共に楽しめるお酒以外の飲料となると選択肢が一気に狭まりますから、お酒を飲まない人も満足できる商品を作って広めたいと地道に伝え、応援してくださる方を増やしていきました」
商品化に向けた議論の中で、いくつかの軌道修正を図った。例えば、商品名は「ドライブアルコフ」としていたが、アルコールのイメージが出過ぎないように「当社のプライベートブランド『和み』を冠した名前に変更しています」。また、多くの人が気軽に買えるように自動販売機での取扱を想定していたが、商品価値を伝えやすい対面販売とレストラン等での提供から始めることになった。一方、当初から変えていない点もある。最大のこだわりは地元の企業との商品開発で、岩手県・一関の世嬉の一酒造と、埼玉県・秩父の戸田乳業に製造を委託することとした。また、商品ラベルは仙台にも拠点を有するデザイン会社、デザポケと共に作り上げた。

デザポケに所属する石巻出身のデザイナーと商品ラベルを制作
2025年7月18日、新商品「NAGOMINO ZERO -和みのゼロ-」がNEXCO東日本管内特定地域のSA・PAで発売開始となった。ラインナップはフルーティな味わいの「和みのゼロ(岩手・一関)」と、ドライな味わいの「和みのゼロ(秩父)」の2種類だ。
「一関はホップと麦芽を使用し、醸造法を少し変えれば本物のクラフトビールが作れるくらいの贅沢な配合で、飲みごたえがあります。試飲した髙谷特任教授は『フルーツワインならぬフルーツノンアル』だとおっしゃっていました。秩父はホップのビターテイストを楽しめる仕上がりで、価格も手ごろなので多くの人に親しんでいただけると思います」
ホップや麦芽を使ったプライベートブランドの炭酸飲料の販売は、全国の高速道路事業者で初めてのこと。反響は上々で、横山氏は「缶の商品開発や自販機での販売も進めたいですし、来年には第3の商品を出したい」と意欲的だ。昨今のSA・PAは旅行者のみならず地元住民も楽しめる商業施設という側面も持つ。ブルワリー併設のSA・PAで地域が盛り上がる日を期待したい。

発売に合わせて、7月に東北道の菅生PA上り線で試飲イベントを実施