デジタル教科書の普及事業が開始 教育DXの展望と事業チャンス

「GIGAスクール構想」の推進を端緒に、学校教育のDXが加速している。文部科学省は2021年度に学習者用デジタル教科書の普及促進事業にも取り組む方針だ。教育DXの展望と民間事業者に与える影響を、東北大学大学院の堀田龍也教授に聞いた。

GIGAスクール構想と教育DX

すべての小・中学校で児童生徒に1人1台の学習端末整備やネットワーク環境整備を行う文部科学省の「GIGAスクール構想」。当初は2023年度が達成目標だった端末整備はコロナ禍の影響で前倒しされ、2021年3月までに約3万校の小・中学校ほぼ全てに端末が行き渡る。

「教育DXのスタート地点に私達は立っています」と東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授は話す。

堀田 龍也(東北大学大学院 情報科学研究科 教授)

「今日の社会で、特に重要なものがICTを道具として活用しながら仕事をする能力です。学校でも学ぶ道具としてICTを使い、コンピテンシーを高めることが、変化の激しい時代を生きる子どもたちには不可欠です」。OECDが実施した2018年の「生徒の学習到達度調査(PISA)」では、日本は学校での授業や宿題にICTを利用する時間がOECD加盟国中で最下位だった。「社会・企業が当たり前のようにデジタルを使いこなす一方で、学校は不思議なぐらい"昭和"のままでした。コロナ禍によって、オンライン授業すら満足にできない学校の現状が社会に可視化されたこともあり、GIGAスクール構想の前倒しと急速な端末整備が実現したのです」

普及が期待される
学習者用デジタル教科書

端末整備の次のフェーズは、デジタルならではの学びを充実させるためのソフト面の整備である。中でも注目を集めているのが学習者用デジタル教科書だ。図表の拡大縮小や書き込み、保存などのデジタル機能を活用した教育活動の充実、動画やドリルなどのデジタル教材との一体的使用、音声読み上げ機能などによる特別な支援が必要な子どもの学びの充実と、紙の教科書にはない様々なメリットが見込まれる。

学習用デジタル教科書の普及が期待される(学研のデジタル教科書。同社プレスリリースより)

学校教育法の改正で、2019年4月から教育課程の一部において紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用できるようになった。ただ、公立小・中・高校等における整備率は2020年3月現在で7.9%(2617校)にとどまっている。学習者用デジタル教科書は、紙の教科書と異なり無償供与の対象外であり、購入費用が市町村教育委員会等の重荷となっているのだ。

そこで、文部科学省は令和3年度概算要求に「学習者用デジタル教科書普及促進事業」を計上。50億円をかけ、1人1台端末環境等が整っている小中学校に経費全額負担でデジタル教科書を提供する実証事業の予算要求をしている。

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