町工場の3代目が見出した活路 中小企業が主役となる時代へ

職人である父が当たり前にやっている仕事は、他の人が簡単にできる仕事ではなかった――。小川製作所の3代目・小川真由氏は、中小製造業は自分たちの価値を過小評価していると語る。そして、技術を安売りすることから脱し、高付加価値を追求すべく、自ら数々の改革を実践する。

小川 真由(小川製作所 取締役)

1953年に創業し、東京都葛飾区で長年にわたり製缶・研磨・板金などの金属加工を営んできた小川製作所。3代目の小川真由氏は慶應義塾大学大学院理工学研究科で航空宇宙の研究に従事した後、富士重工(現SUBARU)に入社して航空宇宙カンパニーに所属。航空機開発の一連のプロセスを経験するというキャリアを歩んでいたが、本人の中では「生まれてからずっと家業を横目に見ながら育ち、いずれは継ぐという思いでした」。

小川氏は富士重工を辞めて家業に入るつもりでいたが、両親からの答えは「お前の仕事はない」。大手メーカーで航空機開発を経験していても、町工場の職人としての技術があるわけでなく、顧客を連れて来られるわけでもない。小川氏は考えた末、実家近くの精密部品加工の町工場で修行することにした。2008年から4年間、その会社で働いたが、それはリーマンショックで苦しい時期とも重なり、小川氏は「いきなり町工場の厳しい現実を体験しました」と振り返る。

小川氏にとってその4年間は大きな糧となり、技術と営業、経営について学んだ小川氏は2012年、小川製作所に入社した。ただ、当時の小川製作所は事業を大きくすることに力を入れておらず、職人である社長の父は「お前が仕事を取ってくるなら」という感じだった。

「私からすると、工場と職人の父というリソースがあって、仕事さえ取れば、それをこなす技術とキャパはある状態でした。私が新しい仕事を取ってきたら、それが小川製作所にとっては新規事業になる。しがらみもなく、自分がやりたいようにできたのは運が良かったと思います」

自分たちの技術を安売りしない

現在、小川製作所は3つの事業を柱にしており、従来の金属加工に加え、小川氏が修行時代の会社から受け継いだ精密部品加工、さらには3D CAD等を駆使した設計・開発支援に広がっている。また、航空機部品や医療器具の加工も手掛けるようになった。

 

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