事業構想大学長×修了生座談会 アイデアを出し、考え続ける

在学中の構想が進化・発展

田中 事業構想大学院大学はおかげさまで9 期目を迎え、今春、大阪、福岡では初の修了生が誕生しました。これまで264 名の修了生が事業構想修士(MPD)の学位を取得し、各所で活躍しています。今回は4名の修了生に、事業構想計画について、また2 年間の経験についてお話しいただきます。

田中 里沙 事業構想大学院大学 学長
マーケティングコミュニケーションが専門。2016年4月より事業構想大学院大学学長。株式会社宣伝会議 取締役。地方制度調査会、財政制度等審議会、中央環境審議会、社会資本整備審議会等委員を務める。

小倉 横浜市の職員として、これまで、都市計画やまちづくり、建築物の検査・審査、公共建築物マネジメントを主に行ってきました。大学院では「住まい・まち次世代再生モデルの構築」という事業構想を考え、計画しました。横浜市は若い世代が流入する地域も一部であるものの、高齢化が進み、空き家が増えていることが課題です。長く使える住宅地を考え、コミュニティ豊かな地域・まちづくりを目指しています。

小倉 有美子 さん
横浜市 建築局 企画部 都市計画課
東京校6 期生(2018 年度修了)

チャイ 私はタイ出身で2009 年に来日し、アプリ開発のエンジニアをしています。「NOTORA」というライトノベルの共同翻訳を通した日本語人材育成プラットフォームを構想しました。私自身が、日本語を勉強する時に小説を翻訳した経験から、タイから日本に留学したい方などに楽しんで日本語の勉強を習得してもらいたいな、という思いがきっかけでした。

ロークニヨム チャッチャイ さん
株式会社GameWith サービス開発部
東京校7 期生(2019 年度修了)

高谷 私立の学校法人で法人広報を担当し、付属の中学校・高等学校の副校長を兼任しています。私は、「大人のための社会見学」を提供する事業構想を考えました。中小企業の経営者と話した経験から、副業、転職など、人材が柔軟に流動する仕組みの大切さに気づきました。現役のビジネスパーソンだけでなく、シニア世代も対象とし、多様な人の知見を生かせる場も作っていければと思います。

高谷 憲弘 さん
学校法人 ノートルダム女学院 法人本部
事務局 総合企画部長 兼 ノートルダム
女学院中学高等学校 副校長
大阪校1 期生(2019 年度修了)

牛島 私は、デザイン制作会社の代表をしていて、 数々の業種のパートナーとして活動しています。事業構想を考える際、重要視したのは「社会性」です。その次に、「独自性」「経済性」を考察していきました。フィールドリサーチで有床診療所の医師から話を聞き、地域に根ざす有床診療所の社会的意義を感じ、「地域のかかりつけ医となるべき有床診療所コンサルティング」構想をまとめました。

牛島 宏 さん
株式会社アド・ベン・コーポレーション 代表取締役
福岡校1 期生(2019 年度修了)

研究を通して得た
柔軟な発想力

田中 

社会環境を見据えて、自身の特技や自社の経営資源を生かし、社会の中でどのような価値を生み出していくか、考えることは事業構想にとって重要です。また、院生のバックグランドは豊かで、年齢も職業も幅広い中で、フラットにアイデアを語り合い、素晴らしい気づきを得ています。

高谷 私は50 代ですが、大学院に通い、学び続けていくことが社会人として重要なことだと気づきました。研究することを通して、柔軟な考え方になり、発想も出てくるようになりました。今では、自分で事業をスタートし、チャレンジできる自信を得たと思います。

チャイ 経営者など様々な立場の院生と話す中で、新しい事業を始める時は、経営者も悩んでいることがわかりました。新規サービスの立ち上げの際も、経営層の考えをイメージしながらチームを導いて仕事ができるようになりました。

田中 事業構想を考えるときは、必ずその対象者がいるので、対象者の考え方や期待、ニーズを知ることが非常に大事です。

小倉 私は大学院に通い、「だけど出来ない」ではなく、「私は出来る、やる」と言えるように変わりました。これからさらに困難な社会状況が続きますが、今こそ事業構想やこの大学院が必要で、私も修了生として一緒に考えていきたいです。

牛島 大学院で「やり方よりもあり方」だと気づきました。事業の目的は何か、どうあるべきか、という「事業のあり方」が大事だということです。事業のあり方が明確だと、共感し、応援してくれる方が集まってくれます。講義だけでは学べないところですが、今後の大学院にさらに期待します。

田中 修了後もさらに進化をしている皆さんの姿 を拝見して、とても頼もしく思います。修了生の皆さんは素晴らしい知のインフラを形成していて、ここはアイデアの宝庫です。困難な時代だからこそ、修了生、院生の皆さんの活躍と事業構想が未来を切り拓くことを確信し、応援しています。