2020年7月号

MPD発の新規事業

瀬戸内の地と発展 社会に求められる『レモンの会社』に

土屋 淳一(ポッカサッポロフード&ビバレッジ レモン食品事業部、事業構想大学院大学 東京校 5期生[2017年度修了])

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"レモンの会社"を目指すポッカサッポロフード&ビバレッジ。食品会社としての社会的使命を深堀りするなかで、川上である原料生産の現場にも足場を広げる。瀬戸内の地から見据える事業構想を聞いた。

飲料メーカーから食品メーカーへ

2013年にサッポロ飲料、ポッカコーポレーションが合併して誕生したポッカサッポロフード&ビバレッジ。グループとして掲げる経営理念"潤いを創造し、豊かさに貢献する"のもと、新会社の強みを活かし顧客へ価値を提供するという経営ビジョンを打ち出した。

レモン食品事業部の土屋淳一氏は、ポッカサッポロフード&ビバレッジ合併前にはサッポロ飲料に所属していた。合併に伴い組織としての経営戦略・成長戦略が組み立てられるなかで、飲料だけでなく食品全体を担う会社であるべき、という方向性が打ち出された。

土屋 淳一(つちや・じゅんいち)ポッカサッポロフード&ビバレッジ レモン食品事業部 事業構想大学院大学 東京校 5期生(2017年度修了)

「ドリンクや調味料という消費財は、社会環境や消費動向などの影響が大きく、変化の激しい分野です。既存の要素で土台をつくることは当然ですが、各メーカーが常に新商品、新領域への進出を目指してしのぎを削っています。こういった環境で戦うには新規事業も非常に重要ですが、十分なリソースを集中できていないとも感じていました。当時は経営戦略を担う部署にいたので、まずは新規事業構築のための社内組織を会社に提案しました。」

2012年の開学当時から事業構想大学院大学の存在を知っていたという土屋氏は、アカデミアという場で外部の視点も得て自身の業務に活かしたいと考え、入学を決意したという。

業種を超えた議論で
アイディアを創発

入学してまず感じたのは、交わされる議論の幅の広さと深さだという。さまざまな専門を持つ教授陣はもちろん、集まった院生も多様なバックグラウンドを持っており、社内での議論以上に思考や視野が広がった。

「どの産業分野でも、どんどん新たな領域に挑戦していく時代です。他業種の方のビジネスモデルを聞いたり、ディスカッションさせてもらったりすることで学びが多くありました」

そしてもう一つ、新規事業開発という目的を同じくする者同士で集まるということ自体も精神的な支えになったと語る。

「新規事業というのは社内では異色の取り組みとして見られがちです。既存事業を安定的、注力的に動かす一方で、新規事業が定着し収益を出すまでには時間がかかります。社内だけで取り組んでいたら、孤立しやすい場面もあります。自分の目指すものが果たして正しいのかどうか、悶々と悩んでいたと思いますが、いろいろな質問に答えてくれる教授陣や、同級生の存在に背中を押してもらえました」

また、院生のなかには農業や外食、関係省庁など、同じ食品業界で戦う人々も在籍していた。彼らとの議論を通じて、"食品メーカーは社会のなかでどのような存在であるべきか""どのような価値を届けるべきなのか"といった本質的な点を深く考えるようになったという。

「事業の理念や存在意義(パーパス)に通じることを深く考える機会があったことで、アイディアを社に持ち帰って経営戦略などに還元するとき、ぶれない軸になったと感じています」

原料生産の川上に入り込み、
地域の活性化を目指す

土屋氏の事業構想は、国産レモンの営農事業を基盤に、地域の活性化やレモンの食品としての魅力向上による市場拡大を目指すことだ。構想実現の第一歩として、2019年4月から広島県・瀬戸内海に浮かぶ大崎上島でレモン栽培の取り組みを進めており、生産から流通・販売までつながる仕組みづくりに取り組んでいる。現地にサテライトオフィスを設置し、生産者らとの関係構築を進めてきた。

大崎上島の肥沃な大地に広がるレモンの園地

毎年5月~6月にはレモンの花が咲く

大崎上島での取り組み構想にあたり、土屋氏はゼミの担当教授から「この構想は自身の構想なのか、会社の構想なのか」と問われたという。

「どの立ち位置でものを言うか、行動を起こすか。企業内で新規事業の開発を方はみなここで悩むのではないでしょうか。曖昧だった点を見抜かれているなと感じました」

生産地への滞在にまで踏み込んでよいのか、悩むこともあったというが、そういった際に、授業で何度も問われた"意義"や"存在価値"といった原点に返ったという。

「事業が社会でどう存在していくべきなのか、日本のなかでどういう位置づけであるべきか。突き詰めて考えていくと、製品を作って届けるというだけでなく、"いかに幸せを提供するか"という目的に行き着きます。すると、視点が作り手側、現場寄りになることは自然の流れでした。原料を供給する川上に入り込んでいくことは食品会社の使命でもあると感じます。大げさに言えば、そうした事業の動きを作ることと自分の社会に還元したい想いがリンクしました」

実際現場に入ることで、生産者の高齢化や耕作放棄地の増加、栽培技術の断絶などの課題と、レモンづくりを次の世代につなごうと奮闘する若手農家の存在という希望の双方を目の当たりにした。現在は生産に注力しているが、さまざまなパートナーとも協働し、流通・販売ルートの整備やPR活動など、メーカーとしてできることはたくさんあるという。

現状、日本で流通するレモンの多くは海外産で、国産のシェアは1割にも満たない。しかし健康や美容といったニーズは常にあり、市場として伸びる余地も大きい。まずは国産レモンを安定的に生産できる基盤の確立が重要だと土屋氏は考える。

「目指すのは"ポッカサッポロといえばレモンの会社"と言われる圧倒的な価値づくりです。地域の価値を上げながらレモンの価値も上げていく。これが最終的に事業価値の向上、持続成長にもつながっていくはずです。特別に目新しい取組でもなんでもないですが、基盤を作ることで、生産者を支える仕組みの構築や定住人口や交流人口の増加など地域が抱える課題解決にまでつなげていけたらよいと考えています」

ポッカサッポロフード&ビバレッジでは、レモンの情報をまとめて分かりやすく「レモンミュージアム」ウェブサイトを開設。レモンの食文化から健康成分、栽培中のレモンの木やイベント情報を掲載している

 

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