2019年12月号

MPD発の新規事業

変革の決め手は人、多様性をチカラに 企業内人材育成の事業構想

田沼 泰輔(ダイバビリティ総合研究所 所長)

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「働く人々の多様性」と「働き方の多様性」は、これからの日本社会にとって必要不可欠。「多様性」をビジネスに活かすダイバーシティマネジメントをもっと促し、強く明るい社会づくりを支える。そんな目標を掲げて船出した「ダイバビリティ総合研究所」。創立者の田沼泰輔氏に話を聞いた。

田沼 泰輔(たぬま・たいすけ)ダイバビリティ総合研究所 所長 事業構想大学院大学 6期生(2017年度入学)

「多様性に富むチーム」が今、
社会に求められている

「ダイバビリティとは、ダイバーシティとアビリティを組み合わせた造語。多様性こそチカラであるという意味です」と田沼氏。立ち上げたダイバビリティ総合研究所について、「日本の社会や企業は、多様性の素晴らしさや重要性を頭では分かっていても、ある種のアンコンシャスバイアスが働いてしまい、なかなか受け入れることができずにいます。日本の社会、そして企業や組織がもう少し多様性の可能性について考え、働く人たちそれぞれの特性を活かせる仕組みを構築するアシストをしていく会社です」と話す。

田沼氏が言う多様性の一つが、「人の違い」だ。民族、価値観、宗教、思想、そして障がいの有無も含めた多様性。今年日本で開催されたラグビーワールドカップ2019を例に挙げ、「優秀なチームであればあるほど、選手の国籍を問わずにチームを構成し戦っていました。国民性や考え方も違う選手たちがチームになって、どうやって勝つかを必死に考えて実践する。そんな各国のチームにも、多様性を活かすためのエッセンスがある気がしました。これからの世の中には、そんなラグビーチーム型の組織が求められていくのではないかと考えています」

ダイバビリティ研究所の設立は、田沼氏がそれまでに積んだ様々なキャリアが支えている。始まりは、大手広告代理店の博報堂。2005年、博報堂が人材育成により力を入れるために設立した企業内大学「博報堂大学」の創設メンバーの一員となったことがまず、人材育成とキャリア開発に携わる第一歩となった。さらに2012年、(株)博報堂DYアイ・オーの代表取締役に就任。この会社が障がい者を積極的に採用しており、「7年間一緒に働く中で人を見る視座が深まり、社会の広さを実感できた自分のキャリアにとってすごくいい体験となりました」

その後、起業を目指して事業構想大学院大学の修士課程に2017年に入学。大学院生として学びながら、障がいのある人たちに限らず、女性や外国籍の人たちなど、「産業社会の中で、どちらかと言えば未だに不利な扱いを受けている」人たちに公平な機会が与えられるように、ダイバーシティマネジメントをもっとビジネスの中に取り込んで、すべての人たちに等しく門戸が開くことを目指し、2019年5月、ダイバビリティ総合研究所を起業したのである。

ダイバビリティ総合研究所の活動概要とその範囲

 

個人の特性をもっと活かせる
多様な働き方も必要

田沼氏が言う多様性には、性差、人種、障がいの有無という「人の多様さ」のほかにもう一つ、「多様な働き方」がある。好むと好まざるにかかわらず仕事が生活の中心、月曜日から金曜日は出社して仕事といった、これまでの日本で当たり前だった働き方にも、もっと多様性が必要だと話す。「今世の中は、働き方に対するパラダイムの変革期にあります。日本の高度成長期時代からの人事慣行である終身雇用は、限界にきている。その中で、企業側は新たな雇用形態の在り方について試行錯誤を続けているし、働く側である個人も、どういう働き方が自身の人生にとっていいのか、また、自身の生活を支える上で望ましいのかを考えることが必要な時代になっています。一律管理的な雇用制度ではなくて、多様な働き方がもっと認められ、それを通じて個人の特性を活かせることができれば、日本の経済社会にもっと貢献できるのではないかと思っています」

この「個人個人が、自らの働き方を考える必要性」に対し発揮されるのが、田沼氏が博報堂時代に培った「人材育成とキャリア開発」における知見である。「博報堂では、人材採用に関して、粒ぞろいより粒違い、をコンセプトにしていました。高い能力を持つ人材を粒ぞろいにするのではなく、それぞれの特性を持つ粒違いの人材を採用するということ。これは、現在の私が掲げる多様性の推進に近い考え方です」。しかし、企業側が「粒違い」を求める場合、採用される側にも、自分がどんな「粒」なのかを自覚しておく必要がある。「自分には、人と違ってこんな個性や優秀性があるということを自覚し、どんなところでそれを発揮できるのか、自己認識を深めてもらうことが不可欠です」

「より良いキャリアを育みたい」という思いに、障がいの有無は関係ないと田沼氏。しかし、どこで自分の強みを発揮しキャリアを積みたいのか、という意思決定に関しては、障がいによっては「どこまで本人の真意が表現できているのか、明らかにできていない部分がある」と話す。そこで、障がい者の意思決定支援について考え、研究を進めるために、11月初旬、東洋大学および、田沼氏が理事の一人を務める全国重度障害者雇用事業所協会とシンポジウムを共催。継続的活動になることを目指しているほか、現在、組み立てブロック玩具を使ったレゴ®シリアスプレイ®を活用した、発達障がい者向けのキャリア開発研修などのサービス化も視野に入れている。

田沼氏が実施したレゴ® シリアスプレイ® ワークショップの模様

自らが多様性の一事例
体現したことを発信

そんな「働き方」の多様性に関しては、「私自身も一つの事例になるのではないかと思っています」と田沼氏。人生100年時代と言われ、定年は70歳になるかもしれず、現在の40代、50代の人たちにとって、「今後どう働いていくか」は大きな課題となっている。「60歳は一つの節目ですが終わりではなく、まだまだ働き続ける上でのマイルストンとして、私は起業という選択をしました」。働き方の一事例として、自分が体現していることを世の中にもっと発信していきたいと話す。

「これまでの日本は、男性中心の管理組織の中で、一本道のキャリアしかなかった。終身雇用のもとで生涯を会社に尽くすという意識で突っ走っていましたが、それではもう立ち行かない。少子化で人数も限られ、社会保障制度にもひずみが生まれており、多様な人たちが手を携えて働く仕組みは不可欠です。そして、人それぞれが持つ働くことへの価値観、自分の生きる証を仕事の中にどう求めるか、そこにも多様性が生まれていいと考えています」

 

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