2019年9月号

MPD発の新規事業

千葉県発 未来を変えたい公務員の「想い」と「力」を結集

月刊事業構想 編集部

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公務員にも地域社会のニーズを捉えた高い専門性が求められる、地方分権の現代。「公務員がもっと力を発揮できれば、地域はもっと良くなる」の言葉を胸に抱き、誰もが強みを伸ばして活躍し、未来に希望が持てる地域社会の構想を聞いた。

榊田 直美(さかきだ・なおみ)
千葉県庁 防災危機管理部 防災政策課 副課長
事業構想大学院大学 東京校2期生(2013年度入学)

自他の強みを知り社会に貢献

2歳の時に東京から高度成長期の団地に引っ越し、以来ずっと千葉県内で育った榊田氏。「地元の役に立ちたいと漠然とした思いをもって県庁に入ってから約20年、租税から福祉、人事、国際交流、広報など幅広い行政分野を経験しましたが、自分の考えや思いを周囲にうまく伝えられないなど力不足を痛感するようになりました。事業構想大学院大学に進学を決意したのは、社会の一翼を担う人材を育成するというコンセプトに魅力を覚えたからです。対象とする内容も、新規事業や地域活性など自身の挑戦とつながるところがあると感じました。普通、公務員というと公共政策系の大学院への進学を選ぶ方が多いですが、私自身は行政以外の世界を見てみたいという思いから、本学を選びました」。

もっとも、1学年35名の中で公務員はわずか2名。授業も初めて聞く内容ばかり。「学んだことを自分は活かしていけるのか?」という不安も少なくなかったという。しかし、榊田氏は異業種の同級生との交流を通じて自分の持っているもの・持っていないものを明確に知ることができたという。「民間企業で働いている同級生は、マーケティングをはじめビジネスの知識が豊富で、スピード感もあり、公務員の私から見たらまぶしいくらいの存在ですが、地域の社会課題については必ずしも熟知していません。他方で自分は、公務員として地域の課題に直面することも多く、社会の仕組みづくりに関与できる立場にいます。民間と行政がそれぞれの『強み』を持ち寄り、チームとして力を発揮できれば、人々が暮らしやすい社会をいち早く実現できるのではないでしょうか」。

また、榊田氏は、本学で視点を変えることの大切さや面白さも知る。「私が在学当時、教鞭をとられていた相原憲一先生の授業からは大きな示唆を受けました。『地域イノベーション』の授業で千葉県の富津市・金谷を現地調査の対象として選んだ際、『一度、千葉県の外から見てはどうか』と先生から提案されました。実際にフェリーで対岸の久里浜から金谷へと東京湾を横断するルートでフィールドワークを行い、いかに自分が固定化した視点で地元を見ていたかに気づかされました」。

「チーム千葉県」の発ち上げ
広がる共創の輪

2年間の大学院生活を経て、事業構想計画書にまとめたのが「チーム千葉県」構想だ。自身の経験から、公務員がさまざまな立場の人たちと交流できる『場』があれば、自らの強みを知り、視点を変えるきっかけになると考えたからだ。チーム千葉県には、官民を問わず「千葉県を盛り上げたい」という有志が集まり、「CHIBA-ICHIBA(ちばいちば)」という交流会兼勉強会を県内各地で開催している。

第1回のCHIBA-ICHIBA in 四街道。講師は一般財団法人地域活性化センターの椎川理事長。

「構想を実現するため、まず『自治体職員有志の会』と『地域に飛び出す公務員ネットワーク』という全国規模のネットワークに参加しました。当時、地域に飛び出す公務員ネットワークのメーリングリストでは、群馬県で立ち上がったネットワークの話題で盛り上がっていました。これを見て『同じような場を千葉県でも作りたい』と投稿したところ、賛同してくれる仲間が次々と現れ、想定外の速さで『チーム千葉県』が発足しました」。

チーム千葉県のロゴ

大学院での指導や学位審査においては「場をつくって、その後どうするのか」という厳しい指摘を指導教員より受けることもあったという。「事業構想大学院大学で異分野交流の場からさまざまな共創が生み出されることを体感的に知っていました。ですので、まず『場』をつくれば創発は自ずと生まれるという確信がありました。初回のCHIBA-ICHIBAで後輩から『よくぞ立ち上げてくれた』と言われたのが印象に残っています。公務員の間でも、『場』に対する潜在的なニーズがあったことを実感した瞬間でした」。

その後輩は、自らチーム千葉県で「オフモード定例学習会」を開催。活動を発展させる形でNPO法人「6時の公共」を立ち上げた。有識者を講師として招き、市民・地方議会議員と共に対話する定期的な勉強会の開催や、まちづくり学習教材の開発プロジェクトを進めている。

2018年11月からはチーム千葉県の公務員メンバーが集まり「地域デザインラボ@ちば」がスタートした。滋賀県職員若手有志の「Policy Lab. Shiga」に触発された新たな取組で、メンバーが自身のスキルを磨くために「住民起点」の政策立案を学ぶ場だ。「日本の地方公務員は、数年単位で異動を繰り返しながら、必要とされるスキルを現場(OJT)や単発の研修で身につけ、ジェネラリストとして育ちます。他方で、まとまった形で専門性やスキルを磨く場はありませんでした」。業務が終わった後、月1回のペースで千葉市内の会議室に集まり、政策立案が専門の講師から学んでいる。今後は学んだことをベースに大学生へのインタビューを行い、若者目線での施策を立案する予定だ。

新NPO法人で
人の才能と人間力を開花

榊田氏の次のステージは新たなNPO法人だ。鍵となるツールは、個人の生まれ持った才能を特定し育成するシステム「Talent Focus®」と人間力のOSとも称される「ThinkSource®」。ビジネス分野で着実に成果を上げているこれらのツールを、公務員をはじめ教育・医療・福祉などに従事している人たちに活用してもらうため、ツールの開発者がNPO法人の立ち上げ、榊田氏も協力していく。

6月30日の「よんなな会」にて。500名近くの参加者を前に新NPO法人をPR。

在学中、「県民の『笑顔』を増やすため、公務員の持っている力を十分に発揮できるようにしたい」とプレゼンした。その思いは今も変わらない。「大学院修了時はネットワークという『場』を用意し、偶発的な成果を『待っている』スタンスでした。新しいNPO法人では具体的なツールを使い、地域のために頑張っている人たちがそれぞれ自らの強みを生かし、最短の時間、最小のストレス負荷で最大の貢献ができる世の中づくりのお手伝いをしたい。公務員という責任のある仕事とNPOの両方を通じて、一人でも多くの県民の『笑顔』を増やしていきたいと思います」。

 

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