クリエイターが公共空間を変える 図書館、公園を魅力的な場所に

デザイン視点を県の施策に取り入れ、2017年にはグッドデザイン賞を受賞した佐賀県。県にゆかりのクリエイターをネットワーク化し、そのアイデアを行政に提示する場を作った馬場氏が、公共空間の活用とシティプロモーション、シビックプライド醸成について語った。

馬場 正尊(オープン・エー 代表取締役)

佐賀県は、デザインを行政政策の柱に据え、県の施策やシティプロモーションに生かそうとしている。2017年には、政策にデザインを生かすという取り組みが、グッドデザイン・ベスト100賞を受賞した。

建築・空間デザインの視点から、佐賀県の活動を支援している設計事務所オープン・エー代表取締役の馬場正尊氏は、シティプロモーションサミット2018in佐賀の2日目に、佐賀県庁で開催されたセッションで、佐賀県の取組や、シティプロモーション戦略を紹介した。

出身有名人の「お気に入り」を発信

馬場氏は佐賀県出身。早稲田大学で建築学を学び、博報堂や建築デザインの雑誌編集長を経て、設計事務所を立ち上げるとともに、不動産仲介サイトの「東京R不動産」を始めた。佐賀との縁は続いており、オープン・エーでは、住民と一体になって佐賀市柳町地区をリノベーションするプロジェクトを手掛けていた。

一方、佐賀県が政策にデザイン思考を取り入れることになったきっかけは、2015年の、山口祥義氏の佐賀県知事就任だ。山口氏は、「さが創生」「さがデザイン」を政策として打ち出した。馬場氏は、柳町のカフェで食事をしているときに、山口知事と偶然隣り合わせたことから、さがデザインにコミットすることになった。

まずは佐賀県の観光サイトをリニューアルし「さがごこち」を立ち上げた。このサイトは、佐賀出身のデザイナーやイラストレーター、大人になってから佐賀に移住した人などが、自分の思い入れのある佐賀の風景を紹介するプロモーションサイトだ。

佐賀県は、世界的なデザイナーの吉岡徳仁氏や、話題を集めたCMを数多く手がけた岡康道氏、画家の池田学氏など、数多くの有名クリエイターを輩出している。「このような人たちが、佐賀のどういう風景を見ながら育ったのか? それをインタビューしてサイトに掲載しました。佐賀県の景色を発信するだけでなく、県出身のクリエイターのネットワークを構築できたのも、成果といえます」と馬場氏は振り返る。県から協力を願うことで、佐賀を離れて活躍している出身者に故郷を再認識してもらい、シビックプライドを醸成する活動といえる。

また、クリエイターが佐賀県に対し自由なアイデアの提案を行う「勝手にプレゼンFES」というイベントを開催した。このイベントで、クリエイターは、手弁当で5分間のプレゼンを知事の前で行う。2016年に始め、2018年には佐賀県庁1階のエントランスホールで実施した。ここから新たに事業化されたアイデアもすでに出ている。

この取り組みで馬場氏は、佐賀県立図書館とその南側にあるスペースのリノベーションを提案した。これは、佐賀城公園の県立図書館南側広場の整備計画につながっている。子どもが走り回れる芝生のスペースや、広場を眺めながら本を読める階段デッキ、木陰デッキなどを設置し、日常的な賑わいの空間を作るというものだ。

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