地域エネルギー事業で経済活性化

仕事が人を呼び、人が仕事を呼び込む好循環を確立し、地方の『稼ぐ力』を向上させることが、地方創生を実現させる上で重要だと言われて久しい。事業構想編集部では、雇用創出や地方創生といった観点から、地域エネルギー事業の有用性や課題を考えてみた。

図1 地域エネルギー構想・事業の取組み状況とその目的

出典:環境省 総合環境政策局 環境計画課『地方自治体の地域エネルギー政策推進に向けた取組み状況について(報告)』(平成27年3月)

『雇用』を生む地域エネルギー

『地域エネルギー事業で地方創生を実現する』可能性について論じる前に、まずは地域エネルギー事業に取組んでいる自治体の目的を整理する。図1は、環境省が地域エネルギー構想・事業の取組み状況とその目的について纏めたものだ。事業を実施している、もしくは、検討を開始した自治体の目的として、最も多い理由は『地球温暖化対策』であり、次いで、『非常時のエネルギー供給』である。具体的には、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー化などの事業を通して、地球温暖化対策を行う、災害時などの非常電源に使用するといったことである。

ただし、注目したいのは、それ以下の項目は、すべて『地方創生』それも、『ひと』『しごと』『稼ぐ力』に関わる理由になっているということだ。雇用関連については『地域経済の活性化による雇用の確保』『新たな産業の創出による産業振興』という項目がある。また、収益につながるものとして『エネルギーコストの削減』『自治体財政収入の確保』がある。つまり、地域エネルギー事業は、雇用を生み出し、収益が増え、ブランドを向上させるという目的において、有効である可能性が充分にあるといえるだろう。

図2 地域エネルギー政策推進上の課題

出典:環境省 総合環境政策局 環境計画課『地方自治体の地域エネルギー政策推進に向けた取組み状況について(報告)』(平成27年3月)

課題は『財源』の確保

一方で、課題もある。既に検討を開始している自治体の課題を図2に示した。およそ4割の自治体が回答した課題は『コスト負担』である。財源に関連するものとして『事業採算性が確保できない』『自治体の財政負担が重い』というものが続く。雇用や収益を生み出しうるが、一方でそのための財源確保がネックになるということだ。

さらに、運営主体となる人や事業者の問題もある。『専門性ある人材がいない』『地元事業者が参入しやすい環境づくりが難しい』といった回答がそれだ。ちなみに、課題の第2位は『安定供給のための地域資源・エネルギー源確保が難しい』だが、これは、バイオマス等の再生可能エネルギー発電における燃料の確保のことを指していると思われる。これらの課題を克服するためには、財政的な心配のない状況を構築すること、専門的なノウハウを持つ民間事業者とパートナーシップを結ぶ事などが、具体的な対応策として考えられる。

『自治体新電力』という考え方

財政的な懸念を払拭するには、初期投資を抑えた事業にするか、収益性の確保しやすい事業計画を構築するといったことなどが想定される。あるいは、既にかかっているコストをいかに削減するか、といった切り口も有効だろう。

例えば、産業連関表による地域の経済分析を行うことで、地域の産業特性を把握するとともにエネルギーコストがどれだけ流出し、それを地産地消できることによってどれだけの効果が出るのかといった戦略を立てることも有効な手段といえる。初期コストをかけずに、このエネルギーコストを削減する手法としては、ESCOを用いた省エネルギー活動や、屋根貸しによる太陽光発電事業などの他、自治体新電力(自治体PPS)という手法も考えられる。

『新電力』という概念そのものは、平成28年度の電力小売自由化によって、大手通信会社やガス会社、交通インフラ系の会社などのプロモーション活動によっても、一般的に認知をされてきている。さらに、自治体が主体的に取り組んでいるケースも出ている。山形県のやまがた新電力や、群馬県中之条町の中之条パワーなどは、平成27年に設立した地域の新電力事業として注目を集めた。太陽光発電所やバイオマス発電事業といった再生可能エネルギー事業を想定した場合、日射量や安定的な燃料供給といった地域の資源性によって、実現性が左右される。しかしながら、新電力に関しては、再生可能エネルギー事業より、地域の資源性によらず実行可能な事業ともいえる。

地方創生、地域の雇用創出、収益性の確保といった視点で、地域エネルギー事業、さらには、自治体新電力を検討してみるのは、いかがだろうか。